シャネル 2024-25年クルーズ コレクション


Shoko Natori

「ランウェイショーの背景として、マルセイユのユニテ ダビタシオンほどふさわしい場所はありません」と、シャネルのアーティスティック・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールは24-25年クルーズ コレクションの会場について語った。モデルたちは、マルセイユのミストラルの風雨をものともせず、ル・コルビュジエのユートピア・モダニズムの傑作の上にあるオープンエアのパフォーマンススペースに登場した。幼稚園、スーパーマーケット、病院、カフェ、ホテル、ギャラリーを備えた平等主義的な「生活のための機械」として建設された「天空の街」は、ル・コルビュジエと同世代のココ・シャネルが服装に革命を起こしたように、人々の生活を大きく変えた。シャネルが女性たちに与えたダイナミックでスタイリッシュな自由は、今日でもヴィアールの共感を誘う。ヴィアールは、シャネルのセレブリティルックに親しみやすい実用性と気軽さをもたらした。

ヴィアールは、シャネルガールが最高のパーカを欲しがっていることを知っている。そうした想いに応えるかのように、ミニドレスのように細長く、モダニズム建築にインスパイアされたカラフルなグリッドモチーフが刺繍されたきらびやかなフロントポケット付きのパーカが登場した。

鮮やかなグリーンのツイード・スーツ(膝上丈で着やすい!)の下からのぞくパーカの他に、シルバーのレザージップトップスとお揃いのミニスカートやグラフィカルな刺繍入りのパッチポケットが付いたジップフロントのシフトドレス、タオル地のビーチサンダル、そしてアクティブなデイタイムを象徴するような白いスキューバスイムスーツなどが一堂に会した。

太陽と建築、音楽、ダンス——こうしたものに加えて、マルセイユは非常に自由な感性を持っています。私は、ライフスタイルや日常生活のデザインコード、そして動きを誘うあらゆるものからインスピレーションを受けました。海と風のおかげで、ウェットスーツで遊びたくなりました」と、ヴィアールはアクション満載のウォータースポーツからのインスピレーションについて語った。

そのいっぽうで、海へのオマージュを込められたクラフトアイテムも数多く登場した。魚や漁網、貝殻、貝類を描いた風変わりで遊び心のある刺繍が、ドレスやスーツジャケット、ひらひらとしたブラウスや小さなベストトップを飾った。アイボリーのラダーレースとアングレーズ刺繍が施された一連のドレスは、ヴィアールが10代の頃、南仏のヴィンテージマーケットで買いあさったナイトガウンにインスパイアされたものである。 

「マルセイユは私の感情を揺さぶる街です。マルセイユの魅力と新鮮な空気、そしてそれらを支配するエネルギーを伝えようとしました」とデザイナーは語った。ヴィアールは、カンヌ、サントロペ、ニースといったきらびやかな海岸線に隣接する都市よりも、よりリアルで地に足の着いた場所であるフランス第2の都市に強いつながりを感じていた。この街は活気に満ちたアートやダンス、ミュージックシーンを誇っており、ヴィアールはそれを積極的に取り入れた。アフターパーティでは地元のミュージシャンやDJにスポットライトが当てられた(マルセイユ生まれのラッパーSCHが会場を沸かせた)。そのいっぽうで、シャネルは文化的な野心を持っており、その影響力を使って他の芸術ジャンルとの交流を図っている。マルセイユでは、ダブルCボタンから刺繍、コスチュームジュエリー、カメリアまで、シャネルのすべてを製造する専門工房である19Mアトリエと提携し、地元アーティストの作品を集めたアート展を開催した。

マルセイユでは、ヴィアールは若者とウェアラブル・ラグジュアリーに寄り添い、日常的なアイテムを取り入れながらも、シャネルらしさを表現した。これらはすべて、ダカールやマンチェスターでのショーと同様に、シャネルがパリの金ぴかのサロンの外でも存在感を発揮できるようにするための、より広範なブランド戦略の一環である。それは、「8,000ポンドのバッグが欲しい人も、80ポンドのフレグランスが欲しい人も、シャネルはあなたに手を差し伸べます」というメッセージを伝えようとしているのだ。シャネルファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントのブルーノ・パブロフスキーは、ショーの前に新聞各紙に「ファッションは展望であり、すべての人のためのものなのです」と語った。

Photography courtesy of Chanel

chanel.com

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