服以外に、ファッション史に残るランウェイショーと聞いて真っ先に浮かべるものはなんだろうか? それは音楽ではないだろうか。2025年春夏の最新号では、ランウェイの演出を支える音楽のづくりのスペシャリストたちにインタビューを敢行。ここではそうそうたるメゾンブランドのランウェイミュージックを手掛けてきた、フレデリック・サンチェスのインタビューを紹介する。
プラダ、ミュウミュウ、エルメス、ヴェルサーチェ、ロエベ、ジバンシィ、バルマン、ランバンなど、世界の名だたるメゾンのランウェイミュージックを手掛けるサンチェス。そのサウンドはデザイナーのメッセージに翼を与え、ランウェイにユニークなエネルギーをもたらす。
──音楽がランウェイに与える効果とは?
私は「音楽」よりも「サウンド」という言葉をよく使うのですが──というのも、音楽に限らず、映画のセリフなどを使うこともあるので──私にとってランウェイショーのサウンドはネガフィルムのようなものです。それはモデルたちを取り巻く、エモーショナルな空間を創出するもの。目に見えない想いを伝えるという意味でも、一種のエネルギーなのです。
──ランウェイミュージック制作におけるご自身のアプローチとは?
サントラ作りとはストーリーを語り、さまざまな感情が体験できるセンシティブな空間を作ることです。だからこそ私はミュージシャンやDJではなく、「サウンド・イラストレーター」を名乗ってきました。
──デザイナーとの協業プロセスについて教えてください。
メゾンやデザイナーとの対話にはじまり、服や生地、ヘアメイク、さらには会場の雰囲気や照明からもインスピレーションを得ていきます。
──もっとも使用頻度の高いトラックまたはアーティストは?
同じアーティストを繰り返し使わないようにしています。私のサウンドとランウェイの雰囲気、そしてメゾンのストーリーがひとつになる感覚が好きなので。その一方で、アンドゥムルメステールのショーでは、パティ・スミスやニック・ケイヴの曲を繰り返し使用しました。これには、デザイナーの美意識を掘り下げるという意図があったからです。
──理想のファイナルトラックは?
無音ですね。昔、カルバン・クラインのショーで最後に無音の空間でカルバンが挨拶をするのを見て、とても感動しました。クレイグ グリーンの2025年春夏コレクションショーのフィナーレも好きです。
──音楽という意味で、忘れられないランウェイショーは?
メゾン マルジェラ、ジル サンダー、マーク ジェイコブス、プラダ……私にとっての初コレクションは、どれも記憶に残っています。
──過去にタイムスリップして好きなランウェイショーのサントラを担当できるとしたら?
数多くの素晴らしいメゾンと仕事をする機会に恵まれたので、これからはジョナサン・アンダーソンやシモーン・ロシャといった次世代デザイナーたちと仕事をしたいです。
──この人は音楽のセンスがいい! と思うデザイナーは?
音楽のセンスの良し悪しは私にはわかりませんが、ファッションのいいところは、ハイカルチャーとローカルチャーを行き来しながら、いろんな実験ができることです。才能あるデザイナーは、常に悪趣味と洗練の絶妙なバランスを保つ術を知っています。
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Photo by FRANCESC PLANES
Creative Editor GARTH ALLDAY SPENCER
Text PAUL TONER
Translator SHOKO NATORI