目がその人の魂を写す”窓”であるとしたら、クリエイターのデスクは、その人の頭の中へと通じる”道”なのかもしれない……こう考えた本誌は、気になるデザイナーやファッション界で活躍する友人たちにデスクツアーを依頼。彼らがどのように仕事をしているのかを知るべく、オフィスにお邪魔した。最高級のヴィンテージショップから取り寄せたプリミティブなデスクや美しい文房具はもちろん、時には散らかったデスクの上まで、あらゆる形のワークプレイスをご覧あれ。今回はバルマンのクリエイティブディレクター、オリヴィエ・ルスタン のデスクを紹介する。
10マガジン:デスクはどこで購入したものですか?
オリヴィエ・ルスタン(以下、ルスタン):パリ郊外を拠点とする才能あふれるアーティストに特注で作ってもらったもので、大理石でできています。その人は世界中の大理石を扱っているんです。実は、自宅の家具はすべてその人に作ってもらったものなんです。知っている人は知っているのですが、僕はとにかく大理石に夢中で。あのテクスチャーが大好きなんです。
10マガジン: 整理整頓されたデスクと散らかったデスク——好きなのはどっち?
ルスタン:整理整頓されたデスクが好きですが、散らかっていることが多いですね。昔のものをなかなか捨てられないタイプなんです。物やプレゼントには思い入れが強くて、手の届く場所に置いておくことが好きです。その結果、デスクの上がぐちゃぐちゃになってしまうので……月に何度かは心を鬼にして整理しています。
10マガジン:デスクにあるもので、いちばん思い入れがあるものは?
ルスタン:もっとも思い入れがあるのはキャンドルですね。キャンドルの香りと灯りがないとデッサンが描けないんです。自分を安心させてくれるだけでなく、包み込まれることで創造性を発揮し、落ち着いて仕事に取り組めます。バング&オルフセンのヘッドフォンも大切なもので、どこにでも持っていきます。音楽がない場所ではデッサンを描くことができませんから。音楽は、ファッションと同じくらい人生に欠かせないものですね。音や音楽はスケッチするときの助けにもなりますし、気分転換にもなります。これまで手がけたコレクションには、すべて独自の”サウンドトラック”のようなものがあるんです。
10マガジン:このデスクから生まれたいちばんの自信作は?
ルスタン:ビヨンセと共同でデザインした「ルネッサンス・クチュール」です。ビヨンセのアルバムを聴き、会話を交わしながらコレクション全体のデッサンを完成させました。これまでに手がけたコレクションの中でもっとも記憶に残っていますね。昼も夜もデスクでデッサンを描き、何カ月にもわたってこのコレクションのことを考えていました。要するに僕のオフィスは、魔法と夢のスタート地点なんです。自分のデスクをひと言で表現するなら「可能性は無限大、不可能なんて存在しない」デスクかな。
Photography courtesy of Balmain この記事は、10 Men Magazine 58号「ELEGANCE, GRACE, BEAUTY」からの抜粋です。