ピエールパオロ・ピッチョーリがデスクを公開


Shoko Natori

目がその人の魂を写す”窓”であるとしたら、クリエイターのデスクは、その人の頭の中へと通じる”道”なのかもしれない……こう考えた本誌は、気になるデザイナーやファッション界で活躍する友人たちにデスクツアーを依頼。彼らがどのように仕事をしているのかを知るべく、オフィスにお邪魔した。最高級のヴィンテージショップから取り寄せたプリミティブなデスクや美しい文房具はもちろん、時には散らかったデスクの上まで、あらゆる形のワークプレイスをご覧あれ。今回はヴァレンティノのクリエイティブ・ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリ(2024年3月に退任)のデスクを紹介する。  

10マガジン:デスクはどこで購入したものですか?

ピエールパオロ・ピッチョーリ(以下、ピッチョーリ):ヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏から譲り受けたものです。ここでこの美しいデスクのデザインや木の種類、あるいはその原産地について長々と説明するのはやめておきましょう。それよりもこのデスクの興味深いところは、私にとって象徴的な意味があるということです。私の創造性を支えてくれる、確固たる存在なのです。ガラヴァーニ氏から受け継いだ大切な過去をベースに最高の作品を生み出したいと思っています。私がこれまでのキャリアを通してそうしてきたように。

10マガジン: 整理整頓されたデスクと散らかったデスク——好きなのはどっち?

ピッチョーリ:コレクションに取り組んでいる最中は散らかっていますが、コレクションが世に出たあとはデスクの上にあった生地や素材を全部片付けてきれいにします。デスクの上を散らかしてはきれいにするという繰り返しは、私にとっては”儀式”のようなもので、とても気に入っています。

10マガジン:デスクにあるもので、いちばん思い入れがあるものは?

ピッチョーリ:家族や友人のためのパーソナルなプロジェクトには、どれも思い入れがあります。愛する人のために仕事をするときは、そのような機会を得られたことに感謝せずにいられません。自分の手で鉛筆を動かしながら、その人たちの幸福に貢献しているような気持ちになるのです。自分の夢が叶った瞬間でもあります。

10マガジン:このデスクから生まれたいちばんの自信作は?

ピッチョーリ:ひとつに絞ることはできません。このデスクの前に座って手がけたひとつひとつのコレクションが私にとってかけがえのないものですから。誇らしいと思うのは、自分の働き方のほうかもしれません。ここに座っているときは、目の前の人と自分との間にフィルターや壁のようなものはありません。パソコンを使わないので、相手とのダイレクトな対話を楽しむようにしています。

Photography by Pierpaolo Piccioli この記事は、10 Men Magazine 58号「ELEGANCE, GRACE, BEAUTY」からの抜粋です。

@pppiccioli

 

Share