創刊1周年を迎える、9月18日(木)発売『10 MAGAZINE JAPAN』2025年秋冬最新号のテーマは、「トランスフォメーション(変革)」。今、時代の変化の波が押し寄せるなか、自分らしさとは何かを突き詰め、独自のスタイルで各分野に新風をもたらし、進化を描きながら時代を映す、そんなクリエイターたちにインタビューを敢行した。
ここでは、日本でアイドルとして活躍後、スペインのIE大学を卒業し、東京を拠点にメンタルヘルスをはじめ、ジェンダーや教育などあらゆる社会問題について話し合う場を創り出す活動を始めたマリウス葉が、あえて肩書きをもたず新たな転身を遂げた境地を、この10マガジンに特別に語ってくれた。
マリウス葉は肩書を持たない。ドイツで生まれ育ち、日本でアイドルとしてデビューしたのは11歳のとき。それから10年、立ち止まることなく走り続けていた彼が初めて自身と向き合えたのは、コロナ禍のステイホーム期間だった。「事務所に入って以来ずっと走り続けてきて、1か月休むことが人生で初めてだったんです。『自分は何者で、これからどういう人になりたいか』という疑問に正面から向き合い、消化する時期でした。それがなかったら今もまだ芸能界にいたかもしれません」。
2022年に芸能界から引退し、スペインの大学を卒業した。東京を拠点に新たな活動を始めた今の彼からは、アイドル時代とは違った側面が垣間見える。「小さな扉が開くように色々な経験が重なっていくことも、きっとターニングポイント。今は自分を制限せずに冒険したいから、あえて肩書をつけていません」と語る。
ベルリン在住の姉・マリレナと始めたポッドキャストでは、ジェンダーや教育、文化といった様々な社会課題について話し合う。特に力を入れているトピックはメンタルヘルスだ。「僕自身、厳しい芸能活動のなかで自分を見失った経験があります。心の健康は体の健康と同じぐらい大切。昔から姉となんでも気軽に話し合って、お互いの知識をシェアし、心をケアしながら壁を乗り越えてきました。そうやってサポートし合える環境やコミュニティをつくれば、それぞれが自分のなかのトランスフォメーションに集中できる世界になるかもしれません」。
人を助けることが自分の幸せでもあると幼い頃から気づいていたという彼は、これまでとは異なる形でその原点に立ち返っている。新たなキャリアを模索することへの不安はもちろんある。しかし「世のなかを変えたいなら、まず自分のなかの世界を整えることから始めないと」と力強く語る彼の眼差しからは、何の迷いも感じられない。現在25歳。「本当の自分を探す旅」に出たマリウス葉は、まだこの世にない肩書を生み出す次世代のアイコンとなるかもしれない。
Profile
マリウス葉
2000年生まれ。ドイツ出身。11歳でSexy Zoneのメンバーとしてデビューし、俳優やモデルとしても活動。2022年に芸能界を引退し、スペインのIE大学で学んだ後、国際的な分野での活躍を目指す。
Photographer RYOHEI OBAMA
Editor & Text FUYUKO TSUJI
Styling by TAKUMI URISAKA
Hair and Make-up by AKIKO SAKAMOTO at SIGNO
MARIUS SEIRYU YO wears DIOR
Digital Editor MIKA MUKAIYAMA