ナン・ゴールディンが撮り下ろしたグッチの新キャンペーンに、ブロンディのデボラ・ハリーが登場


Shoko Natori

「ブロンディ」という名前のバッグの広告キャンペーンの“顔”に、1974年結成のニューウェーヴバンド「ブロンディ」のフロントウーマンとしてカルチャーシーンを牽引し続けてきたデボラ・ハリーよりふさわしい人物なんていない。キャンペーンビジュアルに登場するハリーは、全身グッチのアイテムに身を包み、小型犬と一緒に「ブラックキャブ」と呼ばれるロンドンタクシーの座席にゆったりと座っている。その姿は、息を呑むほどスタイリッシュだ。別のビジュアルでは、ヨーロピアンスタイルの重厚な楽屋の鏡の前で、チェリストのケルシー・ルーがグッチのシグネチャーカラー「グッチ ロッソ アンコーラ」のリップをまとう。さらに別のビジュアルでは、アラート・ジャズィーパーがベルベットの贅沢なソファの上でくつろいでいる。これらの作品を手がけたのは、数々の受賞歴を誇る写真家および映画監督のナン・ゴールディン。「We Will Always Have London(ロンドンは常に私たちとともに)」と命名された「グッチ ブロンディ」バッグの新キャンペーンは、タイムレスなオーラをたたえた大都会ロンドンに捧ぐオマージュとなった。

ロンドンは、グッチにとってゆかりの地でもある。いまから1世紀以上前にグッチの創設グッチオ・グッチは、エレベーターボーイ兼ポーターとしてロンドンの名門ホテル「ザ・サヴォイ」で働いていた。そこで若きグッチオは、世界中の上流階級の人々の卓越したエレガンスに触れ、その豪華なトラベルバッグに魅了された。いまも人々を惹きつけてやまないグッチは、創設者のこうした経験から生まれたのだ。

さらにロンドンは、クリエイティブ・ディレクターのサバト・デ・サルノが2025年クルーズ コレクションショーの舞台に選んだ場所でもある。かつては燃料タンクとして使われていたテート・モダンの展示空間は、デ・サルノによってデカダンな雰囲気が漂う楽園へと姿を変えた。夜の神秘というシネマティックな要素とともにそれぞれの分野のパイオニアとして活躍する被写体たちをロンドンのさまざまなスポットで捉えたゴールディンのドキュメンタリースタイルのビジュアルからは、まるで自分がハリーやモデルたちと一緒にタクシーに乗り、反対側の座席から彼女たちを見つめているような親密さが感じられる。

ゴールディンの魅惑的な世界の中心でスポットライトを浴びているのは、「ブロンディ」というネーミングがぴったりの「グッチ ブロンディ」バッグ。発表された1970年初頭の雰囲気と、レザーまたはエナメルのラウンド型エンブレム、さらにはゆったりとしているのにクリーンなシルエットが特徴のアクセサリーがモダンなバッグとして現代によみがえった。2025年クルーズ コレクションのために再解釈された「グッチ ブロンディ」は、見る人を虜にしてやまないタイムレスな名品と呼ぶにふさわしい。

常に人々のインスピレーションを呼び覚ますロンドンとグッチの絆を称える新広告キャンペーン「We Will Always Have London」は、レジェンドたちが披露するめくるめくスタイリングに彩られた、一度見たら忘れられない作品に仕上がっている。

Photography by Nan Goldin.

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