ニコラ・ジェスキエールは、ルイ・ヴィトンが初めて中国で行うショーのために上海の龍美術館西岸館(ロン・ミュージアム・ウエストバンド)に向かった。打ちっぱなしのコンクリートの大聖堂のような館内を舞台に、中国の若手アーティスト、スン・イーティアン(Sun Yitian)とのコラボレーションによる24年プレフォールウィメンズ・コレクションがスタート。パンダやウサギ、アヒル(大量生産と “メイド・イン・チャイナ “への内省が込められている)など、漫画のような動物たちのイラストがワンピースやコート、バッグ、ミニスカートを飾った。それらはデザイナーの魅力であるレトロフューチャリズムを強調し、遊び心のある(そして非常にコレクション性の高い)方法でショーの幕を開けた。また、ミニスカートやスケータースカートに象徴されるルックがルイ・ヴィトンの特長ともいうべきクラフトマンシップと融合し、若々しく華や可な雰囲気でオーディエンスを魅了した。
ワークウェアやデニムのスケーターショーツにきらびやかな花柄の刺繍が贅沢に施されるいっぽう、いかにも丈夫そうなフロントポケット仕様のバイカーベストには、ルイ・ヴィトンの洗練されたレザーが使用された。アーティスティックにシュレッドされたシフォンのマキシスカートからは、モデルの脚が大胆に露出。モデルの動きに合わせてより美しく見えるこれらのルックは、厚底シューズとのコーディネートによって、活動的な女性たちためのルックであることを強調した。美しいサテンボールガウンのバブルスカートでショーを締めくくったジェスキエールは、コレクションに建築的なドラマをもたらすことに成功した。ファッション界の”シルエットの帝王”と称されるジェスキエールから、これ以上何を望めと言うのか、と思えるほど見事なショーだった。
Photography courtesy of Louis Vuitton