服以外に、ファッション史に残るランウェイショーと聞いて真っ先に浮かべるものはなんだろうか? それは音楽ではないだろうか。2025年春夏の最新号では、ランウェイに欠かせない音楽づくりのスペシャリストたちにインタビューを敢行。ここではルイ・ヴィトンをはじめ数々のランウェイミュージックを手がけてきた、黒人のトランスジェンダーDJとしても人気を誇る、ハニー・ディジョンのインタビューを紹介する。
誰もが羨むようなレコードコレクションとワードローブの持ち主である、DJ兼音楽プロデューサーのハニー・ディジョン。ファッション界との繋がりは深く、なかでも旧知のキム・ジョーンズをはじめ、数々の有名デザイナーのショーや人気ブランドのイベントのサウンドトラックを手掛けてきた。ほかにも、フォトグラファーのイーサン・ジェームズ・グリーンとイタリアン・ヴォーグのプロジェクトの音楽を担当するなど、スタイリッシュなビートでファッション界を虜にしている。
──音楽がランウェイに与える効果とは?
音楽はショーの感情を表現するのに欠かせない要素。観客の聴覚を刺激し、ワクワク感をかき立てるものです。同時に、観客をデザイナーの物語の世界に導いてくれます。
──ランウェイミュージック制作におけるご自身のアプローチとは?
コレクションの感情とデザイナーがイメージした季節を音として表現します。ほとんどのデザイナーは、コレクション制作中に聴いていた音楽や、コレクションの精神が投影された音楽を共有してくれます。それをもとにユニークな音楽を作るには、入念なリサーチが欠かせません。
──デザイナーとの協業プロセスについて教えてください。
デザイナーの頭のなかには、ショーで流す音楽のイメージがあります。私の仕事は、それを正確に表現すること。互いに意見を出し合うことで、予期せぬ結果が生まれることもあります。そういう意味では、まるで椅子取りゲームのように密なプロセスです。
──もっとも使用頻度の高いトラックまたはアーティストは?
アーサー・ラッセル。知的で実験的な彼の音楽は、ショーにぴったりのバイブスをもたらしてくれます。
──理想のファイナルトラックは?
コレクションを締めくくるものですから、最高に盛り上がるものがいいですね。
──音楽という意味で、忘れられないランウェイショーは?
ルイ・ヴィトンのメンズコレクションショー。なかでもジョルジオ・モロダーが音楽を手掛けた2012年秋冬コレクションショーと、ナイル・ロジャースによる2016年春夏コレクショショーが好きです。
──ご自身のジャンルを一言で表すと?
ハウスとディスコ。
──過去にタイムスリップして好きなランウェイショーのサントラを担当できるとしたら?
1985年のアズディン・アライアのショー。
──この人は音楽のセンスがいい! と思うデザイナーは?
長年のコラボレーターであるキム・ジョーンズ。キムはいろんな音楽に精通していて、私にとってはソウルメイトのような存在です。
──火事が起きました。アルバムを3枚だけ救出できるとしたら?
スティーリー・ダンの『Aja』(1977年)、グレイス・ジョーンズの『Nightclubbing』(1981年)、リル・ルイス&ザ・ワールドの『Journey with the Lonely』(1992年)。
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Photo by JAKUB KOZIEL
Creative Editor GARTH ALLDAY SPENCER
Text PAUL TONER
Translator SHOKO NATORI