「OpenAI」サム・アルトマンが語る、生成AIとクリエイティビティの未来

米サンフランシスコに拠点を構え、生成AIの研究開発を行う「OpenAI」のCEO、サム・アルトマン(Sam Altman)が来日。東京を拠点に活動するデジタルアーティストの真鍋大度、草野絵美の2名をパネリストとして迎え、AIとクリエイティビティに関するパネルディスカッションを行った。

ChatGPT(対話型生成AIサービス)やSora(AI動画生成を主軸としたSNSアプリ)が人々の生活に浸透していく中、生成AIはクリエイティブにどんな影響を与えるのだろうか。今回東京で開かれたイベントでアルトマンは、日本がOpenAIにとってビジネス規模で第2位の市場となったことに言及し、クリエイティブ分野におけるAI導入において日本が主導的役割を果たしていることを強調。AIツールがクリエイターの発展を助け、これまでは不可能だった新たな表現形態を生み出すことを期待していると語った。

ライゾマティクス代表の真鍋大度は「AIはコラボレイターというよりも、もはや自分のことを一番よく知っている存在」とし、ツールを超えたものだと説明。壇上ではリアルタイム動画変換を実演した。そして草野絵美は19701980年代にかけて原宿の歩行者天国に現れた「竹の子族」をAIで再現した作品を披露。「日本にはアニミズム(精霊信仰)の考え方があり、さらにテクノ・アニミズムという考え方もある。コンピューターやロボット、さらには電子回路のようなものに至るまで、すべてのものに精霊が宿ると信じているため、私たちは技術を『仲間』や『守護者』のような存在として捉えている」と説明した。

アルトマンは「私の願いは『人間であること』の意味や可能性がますます広がり、多様な新しい体験が実現できて、人生がより良く豊かで創造的になること」と語る一方で、クリエイティブ分野におけるAI導入の安全性についても触れ、「人間の創造性を豊かにし、素晴らしいクリエイターたちが不快な思いをしないようにすることが、私たちにとって非常に重要」と発言。今年4月、ジブリ風画像生成のプロンプトに寄せられた賛否を思い起こさせた。さらにAIを使うリスクについても触れ、「AIモデルのテスト方法や安全基準の定義について、世界共通の基準を作ることが今まさに必要とされる緊急の課題」と語った。著作権侵害やディープフェイク映像など、AIの悪用への懸念は早急な解決が求められている。

また、アルトマンはAIの技術進化は今後2年でさらに加速し、これまでのような週単位の段階的進行ではなく、毎日の頻度になるだろうと明言。しかしIBM1996年当時のチェス世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを破ったスーパーコンピュータを発表しても人々はいまだにチェスに熱中していることを例に挙げ、「人々は人間の物語や感情にこそ強く関心を持っている。機械が素晴らしいことを成し遂げても、人間は物語の主役であり続けるだろう」と議論を締め括った。

OpenAIは日本のデジタル庁と連携し、生成AIを安全かつ効果的に活用して行政サービスの高度化を図る戦略的協力に向けた取り組みを開始すると発表したばかり。クリエイティブ分野はもちろん、生成AIの社会実装もさらに加速していくことだろう。