未知なる自然をAIで創造する芸術家 ソフィア・クレスポ/エンタングルドアザーズ

シャネル・ネクサス・ホールで、AIアートとエコロジーが融合する展覧会「Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地」を開催中。登場するのは、リスボンを拠点に活動するアーティスト、ソフィア・クレスポ(Sofia Crespo)と、彼女がアーティスト・デュオとして活動するエンタングルドアザーズ(Entangled Others)だ。

クレスポは、人工知能(AI)と生命科学の融合で独自の世界観を築くアーティスト。AIによって生成されたイメージと、人間の創造性の間に共通項を模索し続けている。エンタングルドアザーズは、クレスポとノルウェー出身のアーティスト/研究者であるフェイレカン・マコーミック(Feileacan McCormick)によって2020年に結成。彼らは「エンタングルメント=もつれ合い」という概念を軸に、人間と非人間(more-than-human)の関係性を再構築している。観測できない深海、システムとしての植物といった存在をヴィジュアルによる「シミュレーション」として提示し、テクノロジーや自然界の種の表象に潜むバイアスへの問いを投げかける。

©CHANEL

今回の展覧会では映像、彫像、そしてデジタルインスタレーションなど、5つのシリーズを展示。中でも目を引くのは「Liquid strata: argomorphs(流動する海洋層:変態するアルゴフロート)」(2025)。海洋層に関するシリーズの最新作で、深海の様々な情報を観測する機器である「アルゴフロート」で得た情報やイメージを、彫刻と映像で可視化したもの。人類は2000m以上の深海についてはまだ2%ほどしか理解できていないと言われており、その未知なる世界の多様性と特異性、そして不気味さを表象している。

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マコーミックは「私たちは、自然界の未知なる事象を追究している科学者と協働して作品制作することが多い。それは私たちがまだアクセスできない世界に何らかの形で触れたいと願うからであり、そのためにアルゴリズムやコードを使ってシステムを構築している。新しいことを知るプロセスは、世界が広がるということでもあり、それこそが一番美しいことだ」とコメント。クレスポは「この展覧会は私たちアーティストの成長の軌跡も描いている。2018年からAIを使ったプロジェクトを始めたがツールとしてのAIが急速に変化し、それを使う私たちの能力も成長している。それぞれ作品は、スナップショットのように当時の自分たちを捉えている」と振り返った。

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Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地
ソフィア・クレスポ/エンタングルドアザーズ
会場:シャネル・ネクサス・ホール(入場無料・予約不要)
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
会期:2025127日(日)まで。
11:0019:00 (最終入場18:30)※イベント開催時は変更あり。