服以外に、ファッション史に残るランウェイショーと聞いて真っ先に浮かべるものはなんだろうか? それは音楽ではないだろうか。2025年春夏の最新号では、ランウェイに欠かせない音楽づくりのスペシャリストたちにインタビューを行った。ここではコム デ ギャルソンのランウェイミュージックのプロデューサーを務める、アーティスト兼作曲家の「ADC303」ことウーゴ・ナルディーニのインタビューを紹介する。
コム デ ギャルソンのランウェイミュージックのプロデューサーとして、さらにはパリのドーバー ストリート マーケットのコラボレーターとして、ファッションラバーたちから厚い支持を得る「ADC303」ことウーゴ・ナルディーニ。ミュージシャン兼アート・ディレクターのステファン・ド・サン・ルーヴァンとともにサウンドとヴィジュアルアートに特化した「FTMAフェスティバル」を立ち上げたことに加え、最近は数年間取り組んできたアルバムの仕上げに専念している。
──これまでに携わったプロジェクトは?
映画やインスタレーションの楽曲制作、イベントのキュレーション、アーティストへの楽曲提供など、いろんなプロジェクトに携わってきました。現在の主な仕事は、イベントの企画から会場の音楽的アイデンティティーづくりなど、ブランドやベンチャー企業のサウンドディレクションです。
──これまでにどのような人と仕事をしてきましたか?
川久保玲とヴィクトール・ヴァインサント。2021年には、友人のロマン・ウジェーヌ・カンパンスと「3537」という政治団体を立ち上げました。過去には「アイレイ(AIREI)」やヴィンセント・プレシアといったブランドとも仕事をしたことがありますし、パートナーと共同で東京、大阪、京都でのプロジェクトを企画したこともあります。
──音楽がランウェイに与える効果とは?
音楽は頭と心を結ぶもの。その瞬間の解釈を形づくる枠組みのようなものです。ランウェイミュージックは私たちの心を捉え、別の場所へと誘ってくれます。
──ランウェイミュージック制作におけるご自身のアプローチとは?
決まったアプローチはありませんが、サントラを作るときはいつも会話、あるいは言葉を出発点とします。たとえばヴィクトール(・ヴァインサント)の場合は、彼の人生や現状、不安、恐怖について語り合いました。それらをもとにショーとデザイナーの魂をサウンドという形で表現し、調和させていくのです。
──デザイナーとの協業プロセスについて教えてください。
大切なのは、人間同士の繋がりを感じることです。それが感じられない人と働くことは、不可能ですね。
──もっとも使用頻度の高いトラックまたはアーティストは?
エイフェックス・ツイン、ボーズ・オブ・カナダ、坂本龍一、ジョン・ケージなど、作曲のモチベーションを高めてくれるアーティストには触発されます。
──ご自身のジャンルを一言で表すと?
ひとつのジャンルに当てはめることはできません。音楽的な好奇心とオープンさは、常に無限であるべきだと思っています。
──過去にタイムスリップして好きなランウェイショーのサントラを担当できるとしたら?
コム デ ギャルソンのおかげで夢を叶えてしまったので、思い浮かばないですね。コム デ ギャルソン オム プリュスの2024年春夏コレクションでは、モジュラーシンセを使って生演奏を行いました。
──この人は音楽のセンスがいい! と思うデザイナーは?
川久保玲です。その比類なきクリエイティビティには、いつも感銘を受けています。作曲家のサビーシャ・フリードバーグの豊かな才能と熱い魂にも勇気をもらっています。
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Photo by FRANCESC PLANES
Creative Editor GARTH ALLDAY SPENCER
Text PAUL TONER
Translator SHOKO NATORI