“スタジオ54のDNAを東京で” カルチャー&エンターテイメントディレクターの白川麻美が語る、東京現在地

マドンナやマイケル・ジャクソンをはじめ、数々のセレブが常連であった伝説的なクラブ「スタジオ54」の創設者、イアン・シュレーガー。彼のDNAを受け継ぎ、この東京でカルチャー&エンターテイメントディレクターとして、新たなカルチャーのムーブメントを作り出している白川麻美が、今まさに新しい文化やアイデアが生まれ続けている都市東京について、この10マガジンだけに特別な想いを語ってくれた。

1970年代に「スタジオ54」の創設者、イアン・シュレーガーによってニューヨークで大きく開花したディスコカルチャー。マドンナやマイケル・ジャクソンをはじめ、最先端を生きるセレブたちが常連に名を連ね、時代を象徴する社交場となった。続く80年代、彼はディスコに変わって、より安全で健康的、クリーンなナイトライフを提案。「モーガンズニューヨーク」をはじめとするブティックホテルで、人がエナジーを作るという信念をさらに強く打ち出し、ホテルで遊ぶことがステータスの時代を作り上げていった。この彼から受け継いだDNAを実践するのが、「東京エディション虎ノ門/東京エディション銀座」カルチャー&エンターテイメントディレクターの白川麻美だ。

アメリカで育ち、8090年代にアメリカの音楽カルチャーを最前線で体感してきた白川。その後イタリアで学んだホスピタリティの経験を生かし、現在は東京の2つの「エディションホテル」を魅力的な交流とエンターテインメントの場にするべく手腕を振るう。「来てくださった方には、ここで新しい人と出会ってほしいと思っています。なぜかというと人が場所を作るから。イアンさんがよく言っていることなのですが、お金さえあれば誰でもかっこ良いものは作れる。でもどれだけ見栄えがよくても、生きた場所にはならないんです」。

2020年に「エディションホテル」が日本初上陸したのは、新たな賑わいを見せる虎ノ門エリア。麻布台ヒルズをはじめとするこの地域の開発に伴い、レジデンスやヴェニューも次々とオープンする中、「東京エディション虎ノ門」とその1階エントランスに位置する「ゴールドバーアットエディション」が、ミングル場所になっていると言う。

オープンから一年余りでアジア最高のバーアワード「アジアのベストバー」にランク入りし、シグニチャーカクテルメニューは世界のベストカクテルを選出するアワードでトップ3入り。黒を基調とした店内の壁面に大きな金箔のアートが飾られたラグジュアリーな空間では、週末には人気DJがパフォーマンスをする。「美味しいカクテルを飲めて、良い音が流れて踊りたい人は踊ればいいし、ラウンジのちょうどいいサイズ感なのでお話もできる。今までにありそうでなかった、大人のための遊び場なんです」

彼女から大きく広がるコミュニティは、今の時代を象徴するようなコミュニケーションの軽やかさが鍵だ。ここでの出会いがきっかけになってアーティスト同士のコラボ作品が生まれたり、エキサイティングなプロジェクトが始まる新たな東京カルチャーの発信源になっている。

「あるアーティストが素晴らしいプロデューサーにちょっとしたきっかけで出会ってスターになっていく、なんてシンデレラストーリーをニューヨーク時代に何度も目の当たりにしてきました。私自身も人と人を繋げていくのが好きだし、そこからさらに広がっていくのが楽しいんです」

20243月にオープンした「東京エディション銀座」のシグニチャーバー「パンチルームトーキョー」もまた、人と人が出会う場所。「イアンさんをすごくリスペクトしているので、お返ししていきたいんです。受け継いだ「スタジオ54」のDNAを光らせて、人の輪を広げ、いいエナジーが集まる場所にしていくことが、私のミッションです」

Profile
白川麻美
日本生まれ、ロサンゼルスで育ち、大学時代をニューヨークで過ごす。アメリカでラジオDJや音楽インタビュアーとして活動を続け、90年代にはアジア人女性として初めてアメリカのヒップホップ番組、BETの「ラップシティ日本」のホストを務め、米国と日本のストリートカルチャーの架け橋として活動。現在の拠点は東京。「東京エディション虎ノ門/東京エディション銀座」で、「スタジオ54」の創設者、イアン・シュレーガーによって考案されたポジション、カルチャー&エンターテイメントディレクターを務める。

Special thanks to The Tokyo EDITION, TORANOMON, GOLD BAR

Photographer YUJI WATANABE
Text TOMOMI HATA
Sittings Editors SAORI MASUDA and TOMOMI HATA
Digital Editor MIKA MUKAIYAMA