話題の映画『ヒックとドラゴン』でヒロインに抜擢され、スクリーンのなかでひときわ輝きを放つ、イギリス生まれの20歳。世界中を飛びまわる俳優、ニコ・パーカーのまっすぐな言葉としなやかさを纏った存在感に、いま注目が集まっている。
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イギリス生まれの20歳の若手俳優、ニコ・パーカーの勢いが止まらない。彼女が出演する話題作『ヒックとドラゴン』(日本公開は9月5日)がついに公開され、映画評論家と観客の両方を虜にした。同作は2010年に公開された同名の3Dアニメーション映画の実写版で、パーカーはクールで美しいドラゴンライダーのアストリッドを熱演。ニューヒロインとしての地位を確立した。「観終わってから幸せな気分になれる映画って最高ですよね」とパーカーは言う。そのフィールグッド感こそ、同作の興行収入を押し上げた要因なのだ。
このところ、パーカーは同作のプロモーション活動で世界中を飛び回っている。映画の大々的なプロモーション活動はこれが初めてだ。手に入れたばかりの成功の喜びをかみしめながら、彼女はフロリダ州オーランドからビデオ通話アプリを介して本誌の取材に応じた。
「クランクアップ後も、これで終わった! みたいな気持ちにはなりませんでした。その後のプロモーション活動も映画の重要な要素だと考えていましたから」とパーカーは言い、さらに続けた。「キャストのみんなが大好きです。撮影後もこうして一緒に仕事ができるのはとても名誉なことです」。その一方で、地元ロンドンの友人たちが恋しいと語る。「みんな大学に通っているんです。お互い忙しいので、前みたいに簡単に会えないのが寂しいですね」
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パーカーは、いわゆる芸能一家に生まれた。母は女優のタンディ・ニュートンで、父は映画監督のオル・パーカー。姉のリプリー・パーカーはNetflixシリーズ『エブリシング・ナウ!』の脚本家兼制作者だ。子供の頃、パーカーは両親が働く撮影現場をよく訪れていたが、俳優という仕事がどういうものなのか、いまいちピンとこなかったと語る。「母は、カメラの前で同じセリフを100回繰り返しては次の出番を待つ、ということを繰り返していました。子供ながらに『何がしたいんだろう?』と不思議でした」
最初に憧れた職業は歌手だった。その後はバレエダンサーになりたいと思った。「バレエダンサーにはなれなかったと思いますが、それでも踊ることが大好きでした」とパーカーは語る。「両親の影響もあり、演技をはじめたのは自然な成り行きでした」。オーディションを受け、12歳で初めて映画に出演した。ディズニーの名作アニメを実写映画化した『ダンボ』(2019年)だ。
「あのときのことはいまでも覚えています。ワクワクした気持ちで撮影に臨んでいました。『こんなに楽しいことが仕事だなんて、そんなのあり得るの!?』と、思わず父に言ったくらいです。その気持ちは、いまも変わっていません。大好きな演技を仕事にできることに幸せを感じています」
その後もパーカーは着々とキャリアを積み重ねていった。『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』(2025年)ではベビーシッターのクロエを、ドラマシリーズ『THE LAST OF US』ではペドロ・パスカルが演じたジョエルの娘役を演じ、高い評価を得た。今後は、モード・アパトーの長編監督デビュー作『Poetic License(原題)』への出演も決まっている。
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だが、すべてを変えたのは『ヒックとドラゴン』だった。変化のほとんどはポジティブなものだったが、一躍人気俳優の仲間入りを果たしたことでネガティブな意見も耳に入ってくるようになった。たとえば原作ファンのなかには、実写映画のキャスティングに不満をもらす者もいた。というのも、パーカーが演じたアストリッドは、原作では金髪の白人なのだ(パーカーの母方の祖母はジンバブエ人)。これについてパーカーは「前にも同じ経験があったので、そこまで動揺しませんでした」と、『THE LAST OF US』への出演が決まったときのことを振り返った。原作のビデオゲームでは、パーカーが演じたキャラクターは青い目をした白人だったのだ。
「理由はふたつあると思います」と、彼女はキャスティングに対して批判的な声があがる理由を分析した。「ひとつは、原作に対する愛着が強いから。実写映画でも、そのキャラクターと外見も声もそっくりな俳優に演じてほしいと思ってしまうのでしょうね。そんな人たちが実写映画を観て、そうした違いを超えて作品を楽しんでくれることを願っています。もうひとつは、ただの悪意。この手の批判には耳を貸さないようにしています」
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さらに、同作の役づくりではイギリスの作曲家ジョン・パウエルが手がけたオリジナルスコアに助けられたと明かした。「私は役づくりのたびに、その作品のプレイリストを作るんです。音楽のおかげで、自分が演じようとしている人物にすんなり入っていけるような気がします」
アクションシーンに備えてジムにも通った。「体幹トレーニングやアクショントレーニングをたくさんやりましたが、何もかもが初めての体験でした」。そう言って、パーカーは自身のスタントダブルを務めたヤスミン・テイトと、同作のスタントコーディネーターのロン・テイラーに賛辞を贈った。「ふたりが私を勇気づけてくれたおかげで、思っていたよりも多くのアクションシーンを自分でこなすことができました」
日々新しい役を演じることが仕事の彼女にとって、「トランスフォメーション(変革)」がテーマの本号への出演はごく自然なことだった。「俳優という仕事の楽しさと難しさは、常に変化を求められることです。その一方で、実生活のなかでも変化は大切だと思います。年を重ねることや進化を表していますから」
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パーカーの“進化”を語るうえでファッションは欠かせない要素だ。オフの日はTシャツとジーンズで掘り出し物のヴィンテージアイテムを探しに行くのが大好きだが、人前に出るときはファッションを楽しむ気持ちと目的意識の両方を意識しながらドレスアップするという。
そんなパーカーが『ヒックとドラゴン』のレッドカーペットで披露したファッションは、映画の世界観やキャラクターを意識した“メソッドドレッシング”とは一線を画すものだった。パーカーは映画の世界観をファッションに落とし込む代わりに、スタイリストと何度も話し合いを重ねて、自分らしいルックを模索したのだ。これについて彼女は次のように語った。
「とても楽しい作業でした。私は、服とファッションが大好きです。(レッドカーペットは)たくさんの人に注目してもらえる機会ですから、自分にとって心地よいファッションで自分という人間を正確に表現したいと考えました」
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「自分に自信を持てれば、レッドカーペットはそこまで怖くありません」と、パーカーは第78回英国アカデミー賞(BAFTA)の授賞式でまとったシャネルのクチュールドレスを引き合いに出しながら言った。
「シャネルのあのドレスを着たとき、とても厳かな気持ちになりました。以前からシャネルとは一緒に仕事をさせていただいていますし、チームの皆さんにも親しくしていただいています。素晴らしいメゾンです」と親近感をあらわにする。「シャネルの服は、フェミニニティのなかに強さを秘めています。そうした服を思い思いの方法で着て、自分自身の個性を表現できるところが好きです」。
そう言うとアプリから退出し、プロモーション活動の次の目的地であるブラジルへと旅立っていった。新たに生まれたヒロインの今後の活躍が楽しみだ。
トップ画像のドレス 「ココ クラッシュ」イヤリング・下 リング(BG×ダイヤモンド)/CHANEL
ストーリー内の表記外のイヤリング/本人私物
Photographer VANINA SORRENTI
Fashion Editor SOPHIA NEOPHITOU
Talent NICO PARKER
Text CLAUDIA CROFT
Sittings editor GARTH ALLDAY SPENCER
Hair RIO SREEDHARAN
Make-up VALERIA FERREIRA at The Wall Group
Manicurist SABRINA GAYLE at Arch the Agency
Digital operator SAM HEARN
Photographer’s assistants TOM HILL and JEMIMA LE SUEUR
Fashion assistants GEORGIA EDWARDS and TALIA PANAYI
Hair assistant MARY WEAH
Production ZAC APOSTOLOU and SONYA MAZURYK
Translator SHOKO NATORI
Special thanks to JODI GOTTLIEB and ALEXIA JUVIN