「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター、高橋悠介へ10の質問【渡辺三津子が綴る、未来を照らすデザイナーたち連載 vol.8】

『10 MAGAZINE JAPAN』の創刊号では、本誌ファッション・フィーチャーズ・ディレクターでファッションジャーナリストの渡辺三津子が、日本のファッション界の中核を担う9人のデザイナー、二宮啓、宮前義之、山縣良和、黒河内真衣子、森永邦彦、井野将之、落合宏理、高橋悠介、中里唯馬にフォーカスを当て、10の質問を投げかけた。

第8回目は、CFCLの代表兼クリエイティブディレクター、高橋悠介へのインタビューを紹介する。9人のデザイナーの創作の軌跡を追い、それぞれが切り拓く未来への視座に迫った渡辺の総論とともに、共通の10の質問に対する各々の個性が光る返答にも注目してほしい。

高橋悠介/「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター

人間社会へコミットする、ニットの可能性

──実用性と社会性が両立する「品格ある服」という媒体

「自身をファッションデザイナーと名乗らない」という高橋悠介のスタンスは、最近の日本のファッション界に新鮮なインパクトを与えた。横断的にデザインを捉える視点が叶う仕事場として三宅デザイン事務所に2010年に入社する。2013年にイッセイ ミヤケ メンを任され6年間ブランドを率いた後、2020年に独立、CFCLを立ち上げる。

大学でテキスタイルを学び、服づくりを知るために文化ファッション大学院大学に入学したが、「何もできない状況で、パターンや縫製も必要なく、プログラミングして糸をセットすればドレスが出来上がるコンピュータープログラミングニットと出合い」、それが「ニットでドレスを作る」という現在のブランドコンセプトに繋がっていったという。

陶器にも似たそのドレスの造形は、女性たちに心地よい美しさを与えると同時に、廃棄物を軽減するニットの特性を活かして環境に配慮するデザインを実現した。再生、認証された素材も厳選し、日本のアパレルブランドとして初めてB Corp認証を取得した。「着る人より作られる服の方が多い状況のなか、服を通して社会を良くしていく考え方を持たないブランドは難しい」と高橋は考える。「国内のサプライチェーンを大切にする」と明言し、ニット工場と密に連携して生産を行うが、業界全体でニットの生産枚数は激減している。

4年間で会社の規模が10倍に伸びているCFCLでは、最近、実験的なサンプル製作を行える自社のラボを創設し、将来的には技術者の育成や生産工場を持つことも視野に入れているという。「流行とデザインは一緒のものではない」と考える高橋は、「自分はファッションよりクロージング(clothing)という概念の方がしっくりくる」と語る。

2022年から参加するパリ・ファッションウィークでは、「素材の幅を広げるチャレンジと多様な文化に対応するオケージョンの考え方」が課題だという。デザインで社会に向き合う挑戦は、世代を超えて受け継がれ、世界にまた新しいヴィジョンを示し始めている。

『10 MAGAZINE JAPAN』からの10の質問

Q1. 優秀なデザイナーが持つ才能とは?
A1. ファッションという定義が広範囲なのでクリエイティヴィティという視点で語ると、まず独自性ですね。人間の営み全体からちゃんと自分の中で咀嚼してアウトプットできることが重要。

Q2. ファッションデザイナーになりたいと思ったのはいつ?
A2. 小学生の頃の夢は、建築家でした。そこからインテリア、プロダクト、テキスタイル、ファッションと広がっていって、その枠を超える仕事を考えたすえ三宅デザイン事務所に辿り着きました。

Q3. キャリアの転換点となったコレクションは?
A3. 文化ファッション大学院大学の在学中にコンピュータープログラミングニットに出合ったこと。

Q4. デザイナーになりたい若者へのアドバイスは?
A4. デザイナーの美意識だけでは社会が求める服にはなりません。今の時代は、服を通して社会を良くしていく気概がないと難しい。

Q5. もしデザイナーでなかったら、何になりたかった?
A5. 建築、プロダクト、インテリアなど、デザインに関わる全般だと思います。

Q6. あなたの仕事のいちばんの醍醐味は何?
A6. ニットの可能性に向き合い、チャレンジすること。ニットは出来上がりが予測できないことが多く、そういう可能性とフレキシブルに向き合えることが面白い。

Q7. 今日の服を選んだ理由は?
A7. 社会性と着心地が両立する男性の仕事着として考えた、CFCLのモックネックTシャツとテーパードパンツを選びました。CFCLの服は品格、清潔感、実用性などを意識してデザインしています。

Q8. あなたのブランドのスタイルをひと言で表現すると?
A8. 品格と実用性のバランス。

Q9. これまでで最高のアドバイスは?
A9. ひとつというのは難しい。三宅デザイン事務所で得た多くのものが私の基礎になっているので。

Q10. あなたにとって「服」が意味することとは?
A10. 社会に対する自分のステートメントやアティチュードを軽やかに表現する行為。社会と接する媒体というものが皮膚であり、それが服だと考えます。

Photographer YASUTOMO EBISU
Interview & Text MITSUKO WATANABE

Sitting editors SAORI MASUDA and TOMOMI HATA
Digital editors SHOKO NATORI and MIKA MUKAIYAMA