服以外に、ファッション史に残るランウェイショーと聞いて真っ先に浮かべるものはなんだろうか? それは音楽ではないだろうか。 2025年春夏の最新号では、ひとつのファッションモーメントとして歴史に刻まれてきた、ランウェイミュージックを支えるスペシャリストたちにインタビューを敢行。ここではプラダをはじめ、数々のメゾンのランウェイミュージックを手掛けてきた、エレクトロニック・ミュージシャン、リッチー・ホウティンのインタビューを紹介する。
90年代にデトロイトのテクノシーンで頭角を現したホゥティンは、EDM界でもっとも影響力のある人物のひとりだ。DJ、音楽プロデューサー、作曲家とさまざまな顔をもつ彼は、ラフ・シモンズの盟友として、カルバン・クラインやプラダのショーのサントラを任されてきた。
──音楽がランウェイに与える効果とは?
音楽を流すことで、そこにあるすべてのものに深みを与えることができます。色やシルエットなど、ランウェイショーは目で見て楽しむものですが、しかるべき音楽を使うことで、それらの魅力をさらに引き出すことができるのです。
──ランウェイミュージック制作におけるご自身のアプローチとは?
パンデミック中にプラダのショーのサントラを4作手掛けましたが、基本的なアプローチはいつも同じです。まずはラフ(・シモンズ)とミセス・(ミウッチャ・)プラダとの会話からはじまり、コレクション制作が進むにつれて、ふたりからアイデアや言葉が送られてきます。急な変更に対応できる柔軟性も欠かせません。大切なのは、音楽を通してデザイナーのヴィジョンをサポートすることです。
──デザイナーとの協業プロセスについて教えてください。
本番直前まで、デザイナーたちと密に作業します。ヴィジュアルとサウンドを合致させることができたおかげで、ラフとミセス・プラダとの協業が成功したのだと思います。
──もっとも使用頻度の高いトラックまたはアーティストは?
オリジナルの新曲しか使いません。ランウェイショーは作品を初めて披露する場ですから、そこで流れる音楽も、まだ誰も聴いたことがないものがふさわしいと思うのです。
──理想のファイナルトラックは?
観客に「ワオ!」と思ってもらえるようなトラックづくりを心がけています。
──音楽という意味で、忘れられないランウェイショーは?
プラダとの3度目のショー。ショーの方向性が分からず、アップビートなクラブミュージック寄りのサウンドをラフに送ったところ、とてもいい反応が返ってきました。
──過去にタイムスリップして好きなランウェイショーのサントラを担当できるとしたら?
これまで4回プラダのショーに携わりましたが、それ以外のショーにも感銘を受けました。ですから、プラダのショーはすべてやってみたいです。あとは、大好きなリック・オウエンスのショー。
──この人は音楽のセンスがいい! と思うデザイナーは?
いろんなランウェイを見てきましたが、どのスタイルも好きです。特に好きなのは、EDMが使われているショーですね。そういう意味では、やっぱりラフとリック・オウエンスかな。
──火事が起きました。アルバムを3枚だけ救出できるとしたら?
Global Communication(トム・ミドルトンとマーク・プリチャードによるEDMユニット)の『Amenity』(1996年)と、クラフトワークの『Autobahn』(1974年)、『Trans-Europe Express』(1977年)、『The Man-Machine』(1978年)のどれか、そしてマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』(1959年)。
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Photo by LETIZI, Courtesy of T MAGAZINE
Creative Editor GARTH ALLDAY SPENCER
Text PAUL TONER
Translator SHOKO NATORI