カルチャームーブメントのキープレイヤーによる新メンズウェアブランド「オファリング」が誕生

ロンドン発の新ブランド「オファリング(Offering)」がカルチャーシーンで大きな影響力を発揮しつつある。それもそのはず、なぜならこのエキサイティングな新ブランドを立ち上げたのは、『i-D』などのファッション誌で活躍した元スタイリストで、本誌のコントリビューターでもあるサイモン・フォックストン(Simon Foxton)、クリエイティブ・コンサルタント兼映像ディレクターのニック・グリフィス(Nick Griffiths)、インテリアデザイナー兼アンティーク・ディーラーのアダム・ブレイ(Adam Bray)、そして東京発ストリートブランド「シーイー(C.E.)」のファウンダーであるトビー・フェルトウェル(Toby Feltwell)と菱山豊なのだから。5人は、数十年にわたってそれぞれの分野で培ってきた経験を注ぎ込み、シンプルでありながらも静かな輝きを放つ、卓越したメンズウェアのデビューコレクションを世に送り出した。「自分たちが着たい服を作る」以外、特に明確なプランをもたないこのブランドは、トレンドに振り回される、過剰なまでにコンセプト化された今日のファッションブランドとは対照的だ。クラフツマンシップとコラボレーション、そして所有する価値のあるものを作ることに力を注ぐ——それがオファリングというブランドのアプローチなのだ。

 

オファリングのコレクションの原点は、ヴィンテージのファブリックや陶器への深い愛情。ドーバー ストリート マーケット ロンドンで展開中のこのコレクションは、大胆なプリントや流れるようなシルエット、そして目を引く色彩とともにクラシックな模様を再解釈している。すべての製品は日本で生産されており、そのひとつひとつが伝統とモダニティの見事なバランスを映し出す。それだけでなく、厳選されたファブリックと生産に関する専門的なノウハウは、高い品質と耐久性を約束してくれる。製品からは日本のクラフツマンシップの影響が垣間見られるものの、特定のスタイルを模倣しようとしているわけではない。オファリングのねらいは、肩肘張らずに着られる、独創的な洋服を作ることにあるのだ。

 

80年代のイギリスを代表するサブカルチャー誌から、90年代のトリップ・ホップの興隆、さらにはストリートウェアによるハイファッションの“創造的破壊”にいたるまで——それぞれの時代を決定づけたカルチャームーブメントのキープレイヤーたちが自らの豊かな経験を集結させ、唯一無二の体験を創出するオファリング。立役者であるコラボレーションのプロセスやプロジェクトを立ち上げたきっかけ、さらには今後のビジョンについて本誌に語った。

 

原文では菱山さんを除いた4人によるブランドとなっているのですが(後述のインタビューに参加されていないから?記事が出た時点ではブランドへの参画が公表されていなかったから?理由は不明です)、菱山さんを含めた5人のようですので、そのように訳出しています。

 

裏づけあります。

 

原文にこのような文章はないのですが、菱山さん抜きの4人であることを示すため、補足させていただきました。

一緒にものづくりをしてみて、いかがでしたか?

 

ニック・グリフィス(以下、グリフィス):新鮮でしたね。みんなが「これはいいものになりそうだ」と思っているものをいかにして具現化するか、という課題に専念できたのも楽しかったです。

 

トビー・フェルトウェル(以下、フェルトウェル):僕たちのように、長い間、違うフィールドで活動してきた者同士が集まって新しいことに挑戦する、という行為そのものが珍しいと思います。だからこそ、とても楽しい冒険でした。時おり、驚かされることもありましたね。僕たちは、自分の専門分野にとらわれすぎてしまうせいで、自分が得意なことまでわからなくなることが多々あるのです。

 

サイモン・フォックストン(以下、フォックストン):コラボレーションのプロセスはとても興味深くて、予想していたよりもずっとスムーズでした。僕たちは、ものの見せ方についてそれぞれ明確なスタンスを持っていますが、そのせいで意見がぶつかり合うようなこともありませんでした。それは、互いの強みを尊重し合っているからだと思います。誰かの上に立って支配したい、と考えるような人は、ここにはいませんから。

 

アダム・ブレイ(以下、ブレイ):僕はコラボレーションというものが大好きです。経験豊富な仲間たちと一緒に仕事ができたのは、最高の経験でした。おかげで、多くのことを学びました。

 

オファリングを立ち上げたきっかけは?

 

グリフィス:尊敬する人たちと一緒に仕事をしながら、それぞれのビジョンを集結させて、自分たちのフィロソフィーを体現できるものづくりをしたい、と思ったことです。

 

フェルトウェル:なんとなく、新しいことに挑戦する時が来たと感じたのです。僕たち全員が、新しい考え方を象徴する何か——「いま起きていること」という文脈を必要としない何かが必要だと感じていました。

 

フォックストン:アイデア自体は、ずっと前からありました。あまりに昔のことなので、それがいつからあったのかは覚えていませんが。自分たちが着たいと思えるような服が作れたらいいよね、とニック(・グリフィス)とふたりで漠然と考えていたんです。そこにトビー(・フェルトウェル)が加わってくれたことで、実現の道が開けました。トビーは、この分野の専門家ですから。

 

ブレイ:僕たちの間では、ずっと前から一緒にものづくりをしたいという想いがありました。それが「いまやらなければ、いつやるんだ?」というふうに、今回形になったわけです。

 

プリントの模様は、ヴィンテージのファブリックや陶器に着想を得たものだそうですね。着想から製品化にいたるまでのプロセスについて、詳しく教えていただけますか? 

 

グリフィス:多くのクリエイティブ・プロセスがそうであるように、自分たちが構築した豊かなアーカイブを掘り下げて、そこから「この形は新しい」と思えるものを引き出していきました。

 

フェルトウェル:僕たちは、互いのセンスを信頼しています。それだけでなく、視覚的な感受性も似ているんですよ。おかげで、話し合いの必要性をあまり感じませんでした。プロジェクトを前進させるためのきっかけになったのは、アダム(・ブレイ)の素晴らしいアーカイブでした。アダムのアーカイブは、ありとあらゆるジャンルから集められたもので構成されているのですが、そこから視覚的な統一感をもたらしてくれるものを探しました。理想を言えば、洋服にはそれ自体が何かを語るための“言語”が必要です。そうした言語は新しいものであると同時に、その由来を感じさせるフィーリングを体現しなければいけません。

 

フォックストン:アダムは百科事典のように物知りですから、僕たちに素晴らしいインスピレーションを与えてくれました。アダムが出してくれた数多くの案をもとに、みんなで時間をかけながらあれこれ言い合うのは、楽しい作業でしたね。

 

ブレイ:まさに“引き算”のアプローチですね。実際に模様が落とし込まれた服を見ながら、それぞれが意見を出し合いました。そうしたプロセスを繰り返したおかげで、ひとりひとりの視点が混ざり合った、ハッピーな結果になったのです。

Photography courtesy of Dover Street Market

オファリングの製品は、すべて日本で生産されています。日本のスタイルやファッションから影響を受けたりしましたか?

 

グリフィス:オファリングの製品には、世界のさまざまな国や地域から得たインスピレーションとともに、日本の美意識とデザイン哲学が取り入れられていると思います。なかでもファブリックの手触りは、日本のファブリックの質感とリンクするのではないでしょうか。着心地の良さはもちろん、着た時にカッコよく見える服——それがオファリングの服なんです。

 

フェルトウェル:日本のスタイルやファッションの影響を強く受けているわけではないと思います。オファリングにとって欠かすことができない、日本の服づくりならではの要素があることを除いては。少なくとも、「日本製=高品質」のような意味合いはありません。もちろん、オファリングの製品はどれも高品質ですが!日本のものづくりには、どんなに地味な技術にも完璧性を求める、一種のプラグマティズムがあると思うんです。それによって、ラグジュアリーでも煌びやかでもない、日常使いとして作られたものにも深みが生まれます。

 

フォックストン:なんとも言えないですね。ひとつひとつの製品の非構造的なところやシンプルさは“日本らしい”と感じてもらえるかもしれませんが、最初から“日本らしさ”をねらっていたわけではないので。強いて言えば、ファブリックのセレクションは日本的かもしれません。

 

ブレイ:日本のスタイルやファッションそのものというよりは、その質の高さとフィニッシュにインスパイアされました。

 

オファリングの今後について聞かせてください。

 

グリフィス:オファリングがみなさまに歓迎されることを願っています。そうなれば、まだ誰もやったことのない方法でこのプロジェクトを深く、そして広く成長させていけますから。オファリングの製品が人々の心と共鳴することを祈っています。

 

フェルトウェル:ぜひ、今後もこのプロジェクトを続けたいですね。服にとどまらず、オファリングには、まだまだできることがたくさんありますから。

 

フォックストン:このプロジェクトを続けられることを願っています。服だけでなく、ホームアイテムなど、コレクションを広げていけたらいいですね。

 

ブレイ:オファリングは服だけのブランドではありません。今後は、よりパーソナルなアイテムや、ホームデコレーションなども展開していきたいと思っています。

 

Photography by Paul Wetherell.

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