今シーズンのファッションはスタジオを飛び出し、外の世界へ──のどかな草原や静謐を湛えたインテリア空間、人影のない街が服を披露するための背景となり、ひとつひとつのキャンペーンに物語性を添えた。ここでは「第2弾」と称して、本誌のUK編集部がさらに注目した「最高の2026年秋冬キャンペーン12選」をご紹介する。
1. GUCCI
デムナが初めて手がけたグッチのレディ・トゥ・ウェアのキャンペーンにスターたちが大集結。「プリマヴェーラ」と命名されたコレクションは、イタリア語で「春」を意味すると同時に──それは新しい生命のはじまりでもある──初期ルネサンスを代表するイタリアの画家、サンドロ・ボッティチェリの名画のタイトルでもある。そしてこの絵は、デムナにとってのインスピレーション源のひとつとなった。キャンペーンビジュアルを撮影したフォトグラファーのミカル・シェルビンは、音楽と映画、ファッション、スポーツなど、さまざまな分野で活躍する10人のスターたちをカメラに収めた。グッチの新たなビジョンをまとったその姿は、ルネサンスの肖像画を彷彿とさせる。そのなかのひとつでは、元NFL選手のトム・ブレイディがオールレザーのルックを披露しているかと思うと、別のビジュアルではラッパーのリコ・ナスティーが「ホースビット ドゥオーモ バッグ」を手に、素肌にファーコートとレザー手袋という姿でピンクのラウンジチェアに腰掛けている。
これらのキャンペーンビジュアルとあわせて、グッチはショートフィルムを公開。眩いバックレスドレスをまとったケイト・モスがクリス・アイザックの「Wicked Game」をリップシンクで歌うなか、まわりの人たちが次から次へと恋に落ちる様子が描かれている。同作の監督を務めたのは、ヨハン・レンク。自らが監督を務め、2003年に公開されたザ・ナイフの「Pass This On」のミュージックビデオにオマージュを捧げた。ポップコーンを片手に、ゆっくりと鑑賞してみては。Gaia Marinaro
2. ALAÏA
アライアの2026秋冬キャンペーンは、卓越したクラフツマンシップが常に前面に押し出されてきたブランドのデザインコードを忠実に守るものとなった。フォトグラファーのデイビッド・シムズはシンガーソングライターのテヤナ・タイラーをモノクロ写真に収め、その動きと強さ、女性らしさを描き出した。キャンペーンビジュアルのなかでタイラーはぴったりとしたニットドレスを着ているが、体のラインやカーブを際立たせるデザインが彼女の自我を強調している。
「あまり多くを語らずに、女性が自分らしさを表現できるようなファッションが大好き。デイビッドは、とても自然に感じられる方法で、そうした自信をカメラに収めてくれた」とテイラーは語り、「このキャンペーンビジュアルは強くてセクシーで、まさにアライアの精神そのもの」と言葉を継いだ。GM
3. LOEWE
ロエベの2026年秋冬キャンペーンの行き先は、モンブラン山群のポワント・エルブロネ。雪と山々の頂を背景に、ロエベの大胆でいきいきとしたカラーパレットをまとった俳優のジュリア・ガーナーとテオドール・ペルラン(ふたりはロエベのブランドアンバサダーでもある)、ラッパーのリル・ヨッティ、モデルのジーグフリート・ブランシュ、俳優のボウ・ガドストンらが登場する。フォトグラファーのタリア・チェリットが撮影したそれらのイメージは、シュールで幻想的な冒険心と、ロエベの2026年秋冬コレクション(ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスがロエベのために手がけたふたつ目のコレクション)の遊び心を結びつけている。インパクトあふれるコントラストに彩られた服には、説明は不要──鮮やかな黄色のソックスと透明な長靴の組み合わせや、カラフルに染められたシアリングコート、ボリューミーなパーカージャケット、レザーパンツなどがアルプスのワードローブを見事に表現している。
キャンペーンにも登場するアーティストのコジマ・フォン・ボニンの作品に着想を得たスペシャルエディションの「アマソナ バッグ 180」や、フォン・ボニンのアニマルモチーフとギンガムチェックをまとった「パズル」と「フラメンコ」にも注目。GM
4. Giorgio Armani
ジョルジオ アルマーニの2026年秋冬キャンペーンが描き出すのは、シンプルさの力。フォトグラファーのオリバー・ハドリー・ピーチが、ニュートラルカラーをバックにしたモデルのリアム・ケリーとアクバル・シャムジ、そして80年代と90年代のアルマーニのランウェイを彩った唯一無二のスーパーモデルのクリスティー・ターリントンの姿をカメラに収めた。シルヴァーナ・アルマーニとレオ・デル・オルコによる初のコレクションとなった2026年秋冬コレクションは、流れるようなシルエットのパンツやスタイリッシュなアウター、ベルベットとウールが描き出す、柔らかなドレープのシルエットを通してパワフルな色調を想起させる。
さらにジョルジオ アルマーニは、キャンペーンビジュアルとともにブランドのエッセンスを想起させるシンボルを軸としたショートフィルムを公開。なかでも印象的なのは、猫と彫刻、そして1982年にアルマーニ氏自らがデザインした「ロゴ ランプ」が登場する3つのシーン。猫がアルマーニ氏の好奇心と独創的な自由への献身的な姿勢を表すいっぽうで、彫刻はブランドの核ともいうべき身体と心のバランスを、ランプはアルマーニ氏のホリスティックなライフスタイルを想起させる。複雑さを捨てて世界に目を向け、自分自身に正直であれ──そんなメッセージが聞こえてきそうだ。GM
5. WOOYOUNGMI
Wooyoungmiの2026年秋冬キャペーンの舞台は、イギリス南東部ケント州のダンジネス岬。ブランドと二度目のタッグを組むフォトグラファーのアレスデア・マクレランがコレクションの過去と現在の探求を捉えた。コレクションのインスピレーション源は、韓国初の鉄道路線「京仁線」。当時は鉄道旅行が特別なイベントとみなされ、誰もがエレガントに着飾っていたという。ダンディーなテイラリングとともにスリップドレスやオーバーサイズのコートが披露されるその様子は、時代が19世紀から20世紀へと変わろうとする、当時のノマドな感受性を視覚化している。ダンジネス岬の金色の小石と乾燥した灌木、打ち捨てられた線路とともに、Wooyoungmiはリバイバルを待つ、ありし日の旅行スタイルへとタイムスリップさせてくれる。GM
6. Givenchy
サラ・バートンによるキャンペーンには、ある種の自信がみなぎっている。それはジバンシィの2026年秋冬キャンペーンを見れば明白だ。フォトグラファーのユルゲン・テラーがクロアチア沿岸部の無骨な花崗岩をバックに捉えたそのビジュアルを彩るのは、モデルのエヴァ・ハーツィゴヴァやカイア・ガーバー、ニャドゥオラ・ガブリエル、リウ・ウェン、さらにはフランスの作家で元弁護士のコンスタンス・ドゥブレ。その個性とスタイルによってジバンシィの服に新たな奥行きを与えてきた、メゾンにとっておなじみの面々が起用された。そんなキャスティングからも、ひとりひとりが自分という“フレーム”を持つ、幅広い年齢層と多彩なアイデンティティとアティテュードを重視する姿勢がうかがえる。それにシャープなテイラリングやレザーで再解釈された白シャツ、ドレープが美しいイブニングドレス、過剰なまでに重ねられたアクセサリーが呼応した結果、ファッションのキャンペーン広告というよりは、自分らしさを讃えるポートレイトに仕上がっている。それはまさに「私がジバンシィでデザインするすべてのものは、あらゆる女性の現実と輝きを見て、讃えることを軸としています」と語るバートンのねらいどおりなのだ。TP
7. Tom Ford
トム フォードというブランドの中核にあるのは「誘惑」。ハイダー・アッカーマンによる2026年秋冬キャンペーンのテーマは、全身全霊を傾けてそれを表現した。フォトグラファーのスチュアート・ワインコフがモデルのリウ・ウェンやクリステン・マクメナミー、フォトグラファー兼モデルのマリック・ボディアンといったそうそうたるキャストをカメラに収めたそのキャンペーンビジュアルでは、眩い白を背景に、アッカーマンによる紙のようにシャープな服が浮かび上がっている。光が頬骨に反射し、肌のくぼみが影を浮かび上がらせる──そうしながらもアッカーマンの服たちはカメラのレンズや互いと戯れ、見る人に警告しながら、楽しげなその世界に誘う。BK
8. Burberry
ロンドンの呼び声に、バーバリーは見事に応えた。2026年秋冬キャンペーンを展開するにあたり、英国の老舗ブランドは首都ロンドンの精神を探求。UK版『10 MAGAZINE』の表紙を飾ったシンガーソングライターのFKAツイッグスとベッカム家の次男ロメオ・ベッカムらを起用した。長年ブランドとタッグを組んできたフォトグラファーのグレン・ルックフォードが、光り輝くタワーブリッジやビッグ・ベン、国会議事堂を背景にした冬らしいシーンをカメラに収めた。今回のキャンペーンの舞台にロンドンを選んだ理由について、チーフ・クリエイティブ・オフィサーのダニエル・リーは「ロンドンは、なんでもできるような気持ちにしててくれる場所。今季は、ブランドの故郷であるロンドンに回帰するのが正しいことだと思いました」と語った。BK
9. DKNY
ニューヨークといえば、喧騒と野心が渦巻く場所。だが、モデルのアメリア・グレイとアイリス・ロウが全身DKNYコーデで通りを闊歩したとたん、ニューヨークは単なる背景へと沈んでしまう。フォトグラファーのミカエル・ヤンソンが撮影し、トレイ・リアードが監督したDKNYの2026年秋冬キャンペーンでは、ふたりはよく似た雰囲気のコーディネートを披露している。ところが、ふたりの唯一無二の個性にスポットが当たった瞬間、「自分に合った服は自分がいちばんよくわかっている」ことの大切さが浮かび上がってくる。
リラックス感あふれるパンツやテイラリングが光るベストとジャケットを主体としたモノクロームのパレットをベースとする一方で、ダイナミックなアニマルプリントのコートをはじめとするステイトメントピースがDKNYのエフォートレスで万能な本質を強調する。事実、DKNYは1989年からニューヨークの女性たちのさまざまなシーンの装い──朝の通勤から、ウォッカマティーニをすする夜明け前まで──を彩ってきた。2026年秋冬コレクションが大都会の奔放なエネルギーを体現するモダンなDKNYウーマンのためにつくられたことはいうまでもない。GM
10. Karl Lagerfeld
フォトグラファーのマット・イーストンが撮影したカール ラガーフェルドの2026年秋冬キャンペーンには、再発明の名人ともいうべきふたりの意外な人物が登場する。ひとりは、ブランドの顔としてカムバックを果たしたパリス・ヒルトン。もうひとりは、レトロなマルチスクリーンを通じて登場する、「ノット・カール」というデジタルキャラクターだ。後ろで結んだ白髪にサングラスという見た目はカール・ラガーフェルドそっくりだが、実際はそうではない。ひとつのペルソナから一大帝国を築き上げたヒルトンと「ノット・カール」は、意外なコンビを結成したのだ。ブランドのメンズウェアの顔としてヒルトンと共演を果たしたのは、モデルのキット・バトラー。仲の良いふたりが自然なケミストリーを披露している。シャープなテイラリングやモノクローム主体のカラーパレット、タキシードにインスパイアされた長い白シャツなど、キャンペーンビジュアルからはブランドの2026年秋冬コレクションが堪能できる。初登場の「ノット・カール」とともに、カール ラガーフェルドの新章の幕開けを飾ることだろう。Mateo Carmona
11. Zegna
次の代に受け継がれるスーツの証しとは? その問いに対し、ゼニアの2026年秋冬キャンペーンは「スーツが着られる前に起きるすべてのこと」が鍵であると考える。キャンペーンビジュアルでは、グローバルアンバサダーのマッツ・ミケルセンが仕立て職人のもとを訪れる。持っているジャケットのひとつを息子のためにリメイクしてもらうのだ。ワードローブの定番を次の代に受け継がれるのにふさわしいものにする──それはゼニアのメイド・トゥ・メジャー・サービス「Su Misura」の真髄でもある。数百種類の型と生地を取り揃えたこのサービスでは、専任のテーラーチームがその人にぴったりの一着を仕立ててくれる。
なかでもブランドを象徴するのは、1965年に開発されたオーストラリア産ファインメリノを使用した生地「トロフェオ」と、1930年代に創業者エルメネジルド・ゼニアのために仕立てられたスーツに着想を得た「Abito #1」、そしてアルプスにある自然保護区Oasi Zegnaの風景をルーツに持つ「ファルコンジャケット」。仕立て職人の手仕事とともに、ただスーツをつくるのではなく、その人の人生のかけがえのない瞬間に寄り添うものをつくるというテイラリングの意義と、そうしたものがやがては別の人の宝物になることを改めて教えてくれる。TP
12. GUESS
2026年秋、大人気K-POPボーイズグループStray Kidsのヒョンジンがゲスのカリフォルニアのルーツを再訪。
ゲスは、ブランド創業の地であるカリフォルニアのヴィンテージカーやクラシックなガソリンスタンド、映画『ラ・ラ・ランド』にインスピレーションを得たロードサイドのシーンを背景に、ブランドのグローバルアンバサダーを務めるStray Kidsのヒョンジンを起用したキャンペーンを公開。ピグメントウォッシュ加工を施したデニムのセットアップをはじめ、フェイクレザーのアウターやGUESS JEANSとザ・ローリング・ストーンズのコラボレーションアイテムなどを展開する。キャンペーンビジュアルは、太陽が降り注ぐシーンから一転、夜の帳が下りたシーンへ。ゲスが長年にわたって表現してきた自由なアメリカーナの精神に新たな息吹を吹き込んだ──車にヒョンジンを乗せて。TP
〈トップ画像〉photography courtesy of Guess.
