シャネル 2027年春夏コレクション

フィナーレの幕開けとともにブリトニー・スピアーズの「ギミ・モア」が場内に響き、シャネルの2027年春夏コレクションを纏ったモデルたちが一斉に姿を現す。その光景がすべてを物語っていた。「もっと、もっとちょうだい!」と歌うブリトニーのように、私たちはマチュー・ブレイジーのシャネルに夢中なのだ。

シャネルのアーティスティック・ディレクターに就任してから3度目のプレタポルテのメインコレクションとなる2027年春夏コレクションは、またしても歴史に名を残す超大作だった。今季のコレクションでブレイジーが着目したのは、ひとりの女性がその生涯を通じて生きる、さまざまな自分。創業者ガブリエル・シャネルをその雛形とし、修道院育ちの少女、エドワード朝時代の帽子デザイナー(ファッションデザイナーになる前、ガブリエルは帽子を作っていた)、実業家、20世紀屈指のテイストメーカーとさまざまなステージを生きた彼女の物語に衣服のインスピレーションを求めた。

グラン・パレの天井を舞う95羽の鳥たちに見守られながら、ファーストルックを纏ったモデルが登場した。その手に握られていたのは、メゾンのアーカイブに保管されていた「2.55」バッグ──実際にガブリエルが愛用していたものだ。

ブレイジーは、ガブリエル自身のファッション遍歴の鍵を握る瞬間をそれぞれのルックに落とし込むことで彼女の人生にオマージュを捧げた。それは素晴らしいアイデアだ。なぜなら、そうすることでブレイジーは、メゾンのデザインコードを解釈する新たな方法を手に入れたのだから。こうしてジャケットにはガブリエルが生まれ育ったヴィクトリア朝とエドワード朝時代のファッションを思わせるコルセットのディテールやフック・アンド・アイのクロージャが添えられた。なかには背中でぎゅっと絞られた帽子のリボンがエドワード風のフリルになっているものもあったが、一番上までボタンが留められていたり、窮屈さを感じさせたりするルックはひとつもなかった。

ガブリエルが1920年代にジャージー素材のスーツを考案し、体を締め付けるコルセットや動きにくい服装から女性を解放したのは誰もが知るところだろう。ブレイジーも3シーズンにわたってシャネルというメゾンを研究した結果、ある重要な教訓を得た。その教訓とは、「衣服は身体の動きを邪魔してはいけない」だ。いまも昔もシャネルのルックが限りなくモダンで、女性たちを魅了してやまない理由は、まさにここにあるのではないだろうか。実際、ブレイジーがデザインしたローウエストのペンシルスカートの前と後ろには、シルエットを損なわずに自由な動きを叶えられるようにとスリットが入っていた。

ガブリエルは恋人の服を着るのが好きだった。そんな彼女の好みを反映し、全面にビーズを散りばめた白いコルセット風のジャケットとゆったりとした黒いパンツや、シャルべ(2026年7月にシャネルが買収したフランス最古のシャツメーカー)のドレスシャツとトランプモチーフのボタンをあしらったテールコートなど、マスキュリンなルックが数多く披露された。このほかにも、フラメンコのドレスを着たガブリエルの写真にインスピレーションを得た、大胆な模様のジャカードのフリルネックスーツとブーツのルックも登場した。

クロップド丈のボクシーなジャケットから腰の低い位置で履かれたペンシルスカート、さらにはシアーなボディコン風のニットスーツや花の刺繍に彩られたドロップウエストのカクテルドレスに至るまで、ブレイジーのシルエットは緻密だが複雑ではない──むしろ明快でわかりやすい。繊細なカットと見る人をあっと言わせる美しい生地、そしてひとつひとつのルックを飾るディテールはどこまでもエレガントだ。

メゾンの生地開発部門は、可能性の限界に挑み続けることで卓越したビスポークのツイード(そのひとつは、スポーツウェアに匹敵するストレッチ性能を備えたスーツに使用されている)を作り上げた。そこに薄手のメッシュ素材のスーツを飾るデイジーの繊細な刺繍や上品なゴールドチェーンとともに揺れるスカートの裾、すべてがビーズによるオープンウィーブのニット、シルクリボンのカクテルドレス(グリッドメッシュに付けられていることで驚くほどの軽さとテクスチャーを実現)など、オートクチュールレベルのディテールが添えられているのだ。

ブレイジーの拡張的なアプローチは、彼がシャネルに対して抱いているビジョンの深さと、それぞれの人生のステージにおいて、世代やバックグラウンドの異なるさまざまな女性を美しく着飾らせたいという願いを見事に示してくれた。これについてブレイジーは「たったひとりの女性ではなく、シャネルの世界に足を踏み入れられる、あるいはその世界に属することができる大勢の女性に魅力的だと感じてもらいたい」と語った。

その言葉は、パリ・ファッションウィーク期間中に街で見かけた、シャネルを纏った女性たちによって裏打ちされている。ショーの会場でも、年齢も体型も人種も異なる観客たちの多くがブレイジーによる前のコレクションのジャケットを着て、興奮した様子で最近買ったシャネルの新作について語り合っていた。シャネルの衣服はエレガントだ。だが、それ以上にシャネルは「服を着る」という行為のシンプルな喜びを届けてくれる。だからこそ私たちは「もっと、もっとちょうだい!」と願わずにいられないのだ。

Photography courtesy of Chanel.

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