デムナはついに「グッチのグルーヴ」を見つけたようだ。2025年にブランドのアーティスティック・ディレクターに就任して以来、デムナは猛スピードで変わりゆく今日のファッション界におけるラグジュアリーの概念について考え、研究を重ねてきた。そうして発表されたこれまでの作品は、まるで一枚の大きなジグソーパズルを構成するピースのようだった。そのパズルがついに完成したのだ。デムナは、9月25日(現地時間)にミラノで披露された2027年春夏コレクションについて、「私がグッチに対して抱いているパーソナルなビジョンの完全な形」と語った。12か月におよぶ研究を経て、デムナはある答えにたどり着いたのだ。その答えとは、「グッチの存在意義は、より華やかな世界に属したいという切望、そしてその世界を自分自身のイメージに合わせて変えられる大胆さに根ざしている」だ。そんな彼のビジョンはブランドへの憧れを色濃く映し出しているが、だからといってそれだけを表現しているわけではない。デムナは「グッチ=見られることを望むラグジュアリー」と考えるすべてのグッチファンに向けて語りかけているのだ。
デムナのグッチは壮大な劇場でもある。それを証明するように、2027年春夏コレクションの会場には、10月から展開される新たなストアコンセプトを再現した広大なブティックが出現。ラックや棚には、実際に商品が陳列された。ショーの開始とともに扉の向こうから姿を現したのは、個性豊かな買い物客に扮したモデルたち。煌びやかなミニドレス姿のキャンディス・スワンポールが美しいボディラインを見せびらかすようにランウェイを闊歩する一方で、ボリューミーなシアリングコート(オーバーサイズのホースビットをあしらったバックスタイルにも注目)を纏ったロージー・ハンティントン・ホワイトリリーがリッチなビッチを、フェイクタンの肌にレザーのボディコンドレスを重ねた別のモデルがWAGS(有名スポーツ選手の妻や彼女たち)を演じた。「セクシーは、私にとって取っ付きやすいコンセプトなんです」とデムナは認めながらも、「お金のにおいがする華やかでスノッブなファッションだけを自身のビジョンの土台にすることはできません」とコメント。上流階級風の気取ったドレスコードを研究することで自身のコンフォートゾーンから踏み出そうとしたことにも触れた。そうしながらも、それらを「壊れたブルジョワジー」と表現した。
そんなデムナのビジョンは、ジョッパーズパンツに乗馬ブーツを合わせたお嬢様風の騎手やシックなトレンチコートのベルトを締めて襟を立てたリッチなマダム、上品なツイードのスカートスーツ姿のトロフィーワイフ、ラグビーシャツにオーバーサイズのレザーボマージャケットを重ね、タータンチェックのプリーツスカートを合わせたエキセントリックな良家の子女たちによって体現された。さらにデムナは、ポピー・デルヴィーニュやマリア=オリンピア王女、サビーン・ゲッティといった現実世界のアリストクラートたちにこうしたルックを纏わせたのだった。
メンズウェアも、ウィメンズウェアに負けないくらい個性豊かだった。アンクル丈のパンツにドライビングローファー(もちろん素足)を合わせたスタイリッシュなイタリアのプレイボーイもいれば、ホワイトデニムにポロシャツとワックスドジャケットを合わせたオフの日の投資家もいる。さらには、クロップド丈のボマージャケットを羽織ったセクシーなジゴロや、クロージャの部分に3つのホースビットがあしらわれたワイドベルトを巻いたパンクなクラブキッズ、肩幅の広いパワースーツ姿の男たちもいた(まるでクラブで夜を明かしてから出勤するように、目元はアイライナーで黒く縁取られている)。
「私はグッチが『一見、何も共通点がなさそうな人たちが出会い、つながり、インスピレーションを与え合う場所』になることを願っています。なぜならグッチは可能性の空間──誰もが“なりたい自分”になれる場所なのですから」とデムナは語った。
さらに彼は今回のショーを「ザ・ストア・ショー」と命名し、モデルたちに棚やディスプレイ用のキャビネットを眺めながらランウェイを歩くよう指示した。大理石の壁や座り心地の良さそうなソファ、そして暗い色調の木製パネルに飾られた架空の店内には、2026年秋冬コレクションのアイテムをはじめ、デムナがグッチで手がけた4つのコレクションのアイテムが並べられた。会場では、スタッフをつかまえてディスプレイ品について尋ねるVIPの姿も。どうやら、ショーと併せてショッピングも楽しんでいるようだ。
ショップをショーの舞台にするというのは、実に大胆な発想だ。そもそもデムナがアーティスティック・ディレクターに起用された理由のひとつは、ケリングのフラッグシップブランドであるグッチの売上のテコ入れだった。そこで彼は、「私たちはどんなときに買い物をしたくなるのか?」という問いに真っ向から挑んだ。その結果、コンサバな人からワイルドなテイストの人まで、あらゆるタイプの顧客をワクワクさせられる商品をつくる、という答えを導き出したのだ。オーバーサイズのレザーボマージャケットや上品なポロシャツ、セクシーな女神風ガウン、チゼルトゥのローファー、メタルヒールのパンプス、真っ白なホワイトデニムなど、グッチの2027年春夏コレクションはそんな気分にさせてくれる商品が目白押しだ。こうなったらもう、買って買って買いまくるしかない!
Photography courtesy of Gucci.
