「マメ クロゴウチ」デザイナー、黒河内真衣子へ10の質問【渡辺三津子が綴る、未来を照らすデザイナーたち連載 vol.4】

『10 MAGAZINE JAPAN』の創刊号では、本誌ファッション・フィーチャーズ・ディレクターでファッションジャーナリストの渡辺三津子が、日本のファッション界の中核を担う9人のデザイナー、二宮啓、宮前義之、山縣良和、黒河内真衣子、森永邦彦、井野将之、落合宏理、高橋悠介、中里唯馬にフォーカスを当て、10の質問を投げかけた。

第4回目は、マメ クロゴウチのデザイナー、黒河内真衣子へのインタビューを紹介する。9人のデザイナーの創作の軌跡を追い、それぞれが切り拓く未来への視座に迫った渡辺の総論とともに、共通の10の質問に対する各々の個性が光る返答にも注目してほしい。

黒河内真衣子/「マメ クロゴウチ」デザイナー

「私」から生まれ、寄り添う「宝物のような服」

──着る人の背中を押す佇まいの美しさ

小柄で柔らかな佇まいのなかに強さを秘めた人。黒河内真衣子に会った誰もがそんな何かを感じるはずだ。3歳のときに「ファッションデザイナーになる」と決め、「お姫様のドレスを描いた絵」は、今はコレクションのデザイン画として変わらぬ感覚で描き続けられている。

2006年に三宅デザイン事務所に入社。2010年に独立し、自身のブランド、マメ(現在はマメ クロゴウチ)を立ち上げる。しなやかさのなかに凛とした佇まいのあるデザインは、女性たちの「背中を押し、寄り添う存在」として同世代を中心に熱い支持を得ている。

現在の創作の方法論を見出したのは2014年。長野に暮らす祖母の生活を毎日追ってコレクションのストーリーを紡いだ。「心が動かされる美しさの根源が自分のルーツ、生まれたところにあったことを再発見した」という。彼女はそれを「私小説」と呼ぶ。「それがクラフトと結びついて、服としてどうアウトプットできるか」というもの作りの方向が生まれた。

2018年にパリ・ファッションウィークに初参加。ブランドのひとつの核と目されていた「女性性」について質問すると、パリで多様な人々と出会うことで既存の枠を超えた「人間であることがとても大切」という感覚の広がりを得ることができたと語る。2024年秋冬は古唐津の陶器がインスピレーション源となった。美しいものを見ると「これをどう服にするかばかりを考えている」。

デザイナー以外の人生は考えられず、マメらしいやり方を模索しながら生涯継続していくことを経営者としても思案する。そのためには「会社を大きくするより、どう濃度を保てるかに興味がある」という。「どこの産地に行っても一生さんたち先人が形にしてきたものが歴史のなかにあるので、それを私たちの世代で潰してはいけない」という危機感も持つ。

イッセイ ミヤケで学んだ「アイデンティティを別の形でちゃんと継承していきたい」という彼女の強さは、おそらく何度でも立ち返れる「私」を見つけたからであろう。それは、誰のものでもない「宝物」であり、また誰かに、「大切な服」として引き継がれてゆくものとなるだろう。

『10 MAGAZINE JAPAN』からの10の質問

Q1. 優秀なデザイナーが持つ才能とは?
A1. 寛容さと譲れないわがままな気持ちを両方持ち合わせること。

Q2. ファッションデザイナーになりたいと思ったのはいつ?
A2. おそらく3歳。お姫様の絵を描いてドレス屋さんをするというのが私のおままごとでした。それが今も継続している感覚です。

Q3. キャリアの転換点となったコレクションは?
A3. 2014年の1年間を通して表現したコレクション「パーソナル メモリー」。故郷の長野の田舎で暮らす祖母の家で、毎日インタビューして彼女の生活をリサーチして作りました。自分のルーツに向き合う「私小説」的なことと、手作りの「クラフト」が結びついた大きな転換点でした。

Q4. デザイナーになりたい若者へのアドバイスは?
A4. 自分を信じて、続けること。才能云々ではなく、それが自信に繋がる。

Q5. もしデザイナーでなかったら、何になりたかった?
A5. 考えられない。またデザイナーになります。

Q6. あなたの仕事のいちばんの醍醐味は何?
A6. 本当に素敵だなと思って自分の服を作っているので、その「キュン」とする気持ちをお客様まで想いの連鎖として繋げていけること。

Q7. 今日の服を選んだ理由は?
A7. いつも通りの服です。マメの服は人に寄り添う存在でありたい。私らしさがあって、でも私を無理して大きく見せるわけではない服。

Q8. あなたのブランドのスタイルをひと言で表現すると?
A8. 美しさの佇まいがある服。袖を通したときに、ちょっと気持ちの背筋が伸びるような。

Q9. これまでで最高のアドバイスは?
A9. 「マメちゃんは、宝物のような服を作るね」と三宅一生さんが言ってくださった。自分にとって宝物のような言葉。一着一着にそんな尊い気持ちで向き合えているのか、自分に問うきっかけになりました。一生さんに恥じぬもの作りをしなくてはいけない、と感じています。

Q10. あなたにとって「服」が意味することとは?
A10. 誰かの想いをまとえることの素晴らしさ。それが自分の皮膚となることで、受け取ったものを自分のものにしていくことができる。

Photographer YASUTOMO EBISU
Interview & Text MITSUKO WATANABE

Sitting editors SAORI MASUDA and TOMOMI HATA
Digital editors SHOKO NATORI and MIKA MUKAIYAMA