『10 MAGAZINE JAPAN』の創刊号では、本誌ファッション・フィーチャーズ・ディレクターでファッションジャーナリストの渡辺三津子が、日本のファッション界の中核を担う9人のデザイナー、二宮啓、宮前義之、山縣良和、黒河内真衣子、森永邦彦、井野将之、落合宏理、高橋悠介、中里唯馬にフォーカスを当て、10の質問を投げかけた。
第7回目は、ファセッタズムのデザイナー、落合宏理へのインタビューを紹介する。9人のデザイナーの創作の軌跡を追い、それぞれが切り拓く未来への視座に迫った渡辺の総論とともに、共通の10の質問に対する各々の個性が光る返答にも注目してほしい。
落合宏理/「ファセッタズム」デザイナー
東京発の自由なファッションをデザインの共通言語に
──新しい日常の価値観をファッションから探る
東京生まれの落合宏理にとって90年代は、ファッションのエネルギーに包まれて育った時代と言えるだろう。学校帰りに制服で出かけた裏原や青山には東京のストリートウェアからベルギーデザイナー、並行輸入の“アメカジ”まで何でも揃っていた。落合は「あの時代のファッションの中心は東京だった」と語る。
1999年に文化服装学院を卒業。テキスタイル会社に就職後、2007年にファセッタズムをスタートする。「型にはまらない東京らしさ」が注目され、2015年にはジョルジオ・アルマーニのサポートによってミラノ・ファッションウィークでショーを発表する。2016年のLVMHプライズでは日本初のファイナリストに選出。「自分にとってとても自信になったし、今でもあの時の候補者たちとは仲がいい」とフレンドリーな性格をのぞかせる。
同年、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック競技大会閉会式の「フラッグハンドオーバーセレモニー」の衣装制作を手掛ける。「地獄のように忙しかったけど、想像していないことがどんどん起きたときでした」と振り返る。その直後に、ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」の企画が持ち込まれ、「二つの大きなことを経験したので、自分にもできるかな」と挑戦することに。「国内に1万6000店舗以上で延べ年間利用者はオリンピックの視聴者とほぼ同じ55億人。これはひとつのメディアだと感じてポジティブなメッセージを伝えたいと考えました」
コロナ禍ではあえて蛍光イエローなど鮮やかなソックスを並べて大ヒットを記録した。今は外国人観光客にも「日本のお土産」として持ち帰ってほしいという。「クリエイティブ・ディレクターとして日本の文化を底上げしていきたい。ファッションでどんな価値が作れるのか、今めちゃくちゃ楽しい」と語る。「ファセッタズムの方はより自分の好きなものを明確に作っていきたい。3年後に20周年ですが目標を立てずに、どんどん来ることを返していけば自分らしい道ができるんじゃないかと思っています。ずっとこんな感じです」
『10 MAGAZINE JAPAN』からの10の質問
Q1. 優秀なデザイナーが持つ才能とは?
A1. 自分の美意識を持ち、ひとつの考えをずっと貫ける。それと、「初期衝動」を忘れない。
Q2. ファッションデザイナーになりたいと思ったのはいつ?
A2. 小学生のときから服がすごく好きで、ファッションデザイナーしか考えたことがなかった。高校生の頃に裏原ブームがあり、学生服でよく通い、アンダーカバーやNIGO®さんが世界に出ていくムーブメントを見ていました。
Q3. キャリアの転換点となったコレクションは?
A3. 2014年の「LOVE」というテーマの東京での最後のショー。会場に人が集まりすぎて、次どうしようと思った。
Q4. デザイナーになりたい若者へのアドバイスは?
A4. 「初期衝動」を大切に。その気持ちが消えなければ、乗り越えられるものは多い。
Q5. もしデザイナーでなかったら、何になりたかった?
A5. 考えたことがない。今はファッション以外の依頼も多いが、ファッションしか知らない価値観は自分にとって武器となると思っています。
Q6. あなたの仕事のいちばんの醍醐味は何?
A6. 今、人生でいちばん早い流れのなかで生きていて、ふとした瞬間にボワッと自分が思っていたことが形や言葉になるとき。
Q7. 今日の服を選んだ理由は?
A7. バッファローチェックが大好きで、パンツがファセッタズムの2024春夏でシャツが過去のもの。Tシャツはファミリーマートの「コンビニエンスウェア」のXLサイズ。ヘインズのような定番が作りたかった。
Q8. あなたのブランドのスタイルをひと言で表現すると?
A8. ブランド名はダイヤモンドの側面を表すファセットからで、さまざまな顔という意味。だから、いろいろなクリエイティブをポジティブにポップに挑戦していきたいと思う。
Q9. これまでで最高のアドバイスは?
A9. 「洋服をちゃんと作れるまでは洋服を壊すな」。北村道子さんから言われた言葉。
Q10. あなたにとって「服」が意味することとは?
A10. 自分自身のルーツ。生活、思考のすべては服から始まる。
Photographer YASUTOMO EBISU
Interview & Text MITSUKO WATANABE
Sitting editors SAORI MASUDA and TOMOMI HATA
Digital editors SHOKO NATORI and MIKA MUKAIYAMA
