『10 MAGAZINE JAPAN』の創刊号では、本誌ファッション・フィーチャーズ・ディレクターでファッションジャーナリストの渡辺三津子が、日本のファッション界の中核を担う9人のデザイナー、二宮啓、宮前義之、山縣良和、黒河内真衣子、森永邦彦、井野将之、落合宏理、高橋悠介、中里唯馬にフォーカスを当て、10の質問を投げかけた。
第1回目は、ノワール ケイ ニノミヤのデザイナー、二宮啓へのインタビューを紹介する。9人のデザイナーの創作の軌跡を追い、それぞれが切り拓く未来への視座に迫った渡辺の総論とともに、共通の10の質問に対する各々の個性が光る返答にも注目してほしい。
二宮啓/「ノワール ケイ ニノミヤ」デザイナー
“常に新しさを追求するコム デ ギャルソンのDNA”
──会社の価値観が共鳴する挑戦の高みと創作の喜び
二宮啓は、大学卒業後にアントワープ王立芸術アカデミーに入学、2008年にコム デ ギャルソン社に入社する。コム デ ギャルソンのパタンナーを4年間務め、2012年に自身のブランド、ノワール ケイ ニノミヤをスタートし、2018年にパリで初ショーを披露する。その名が示す通り、「Noir=黒」をブランドコンセプトとし、黒の可能性を追求している。
しかし、近年ではさまざまな色に挑戦することも多くなっている。それについて二宮は「黒を見せていくためのひとつの仕掛けや考え方であって、ブランドを始めるときから黒はベースにあるコンセプトであって『色の制約ではない』」と語っている。斬新な素材(チューブやアルミなど)や服作りのテクニックへのチャレンジが毎回あると同時に、視覚的なドラマに溢れたドレスやショーの演出によるクリエイティヴィティの高さに世界的な注目が高まっている。
その挑戦は、「製作の過程で発見することもありますし、最初にシミュレーションして始めるケースもある。また全然関係のない、例えばネジの構造から思いつくことも。新しい方法は、いろいろな方面からリサーチし、複数の角度から試しながら生まれてきます」という。コム デ ギャルソン社には他にも二つの先輩たちのブランド(ジュンヤ ワタナベとタオ)がある。「社長をはじめ、今までいろいろな表現を行ってきているので、それより先にさらに、となると難しいですよね。でも、がんばります」と、社内での無言の切磋琢磨の厳しさをのぞかせる。
同社のデザイナーは皆、ブランドごとに売上げの数字の責任を持ち、予算から商品構成などすべてを考える。クリエイションとビジネスのバランスを自ら“デザインする”という、川久保玲と同じ考え方に従って仕事をするのだ。「そのやり方しか知らないので、逆に売り上げやお店のことを考えずにどうやってコレクションを作れるのかわからない」という二宮にとって、「思いを込めて作った服だから最後まで面倒をみたい。そのためにも日々の細かい仕事を大切にする」のは必然なのだ。革新と継続、その大切さは毎日の仕事こそが教えてくれる。
『10 Magazine Japan』からの10の質問
Q1. 優秀なデザイナーが持つ才能とは?
A1. デザイナーといってもさまざまなのでひと言で言うのは難しいですね。
Q2. ファッションデザイナーになりたいと思ったのはいつ?
A2. 子供の頃から手を動かしてものを作るのが好きでした。ファッションを仕事として意識したのは20歳頃。
Q3. キャリアの転換点となったコレクションは?
A3. 特にないです。常に新しいことに挑戦しようと思っているので。
Q4. デザイナーになりたい若者へのアドバイスは?
A4. やってみないとわからない。悩むのも大事。為すがままでいいと思います。自ずと答えが出るのではないでしょうか。
Q5. もしデザイナーでなかったら、何になりたかった?
A5. 考えたことがありません。「したいこと」はあるのですが、「何になりたい」ということはあまり考えたことがない気がします。
Q6. あなたの仕事のいちばんの醍醐味は何?
A6. もの作りの現場にたずさわれることです。ものを作るなかで、新しい発見があるとき。また、仕事だけではなくて、素敵なものに触れられたときはとても幸せな瞬間だと思います。
Q7. 今日の服を選んだ理由は?
A7. 黒いシャツはよく着ています。いつも同じです。入社したときから変わりません。
Q8. あなたのブランドのスタイルをひと言で表現すると?
A8. 黒。Noirです。
Q9. これまでで最高のアドバイスは?
A9. 川久保と仕事をするなかで、交わす言葉は少ないけれど、毎日学んでいます。もの作りに対する姿勢や、日々の過ごし方、仕事への取り組み方、新しいことを常に目指す考え方など……うまく言葉にまとめられませんが、すべてなんです。変わらない軸があることが何よりすごい、といつも感じています。
Q10. あなたにとって「服」が意味することとは?
A10. 自分にとっては第一に仕事。そのなかで表現することや作ることに、大きな喜びや楽しみを見出しています。この仕事を長く続けられたらいいと思います。
近日公開予定/「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」テザイナー、宮前義之への10の質問はこちらから
【渡辺三津子が綴る、未来を照らすデザイナーたち連載 vol.2】
Photographer YASUTOMO EBISU
Interview & Text MITSUKO WATANABE
Sitting editors SAORI MASUDA and TOMOMI HATA
Digital editors SHOKO NATORI and MIKA MUKAIYAMA
